なんで?

大温室 5  

2014年03月02日 ナビトモブログ記事
テーマ:仕事

  7日。解体屋の作業員は、8時にやって来た。
 社長に、「この間言っていた板切れ、持って行っていいですか」と言った。
「うん。持って行って」
「あの、プランターと土も、いいですか」
「欲しいもん、なんでも持って行って」
 苺屋は閉める前に、「欲しいもんあったらあげます」と、なんで言わなかったのだろう?
300個ほど積み重ねてあったプランターの10個に、土を掬い入れた。ショーが軽トラで運んでくれた。
 筋向いの奥さんが、なにが始まったのかと出て来た。
「この温室、全部壊すんですて」
「へええ。もったいない。事務所も?」
「みんな。更地にしはるんですて」
「また田んぼに?」
「会社が来るらしいですよ」
「なんの会社やろか」
「知りません。この小さい温室と事務所、貸して欲しかったんですけどなあ。役所に訊いたけど、返事なかった」
「地主さんは3人ですわ。あの、北の温室の土地は、上の八百屋さんのんですわ。壊さんとこのまま借りたい言うたら、貸してくれはるかも判りませんよ」
 へえ。地主さんを知っている人もいたんだ。詳しい場所を聞いて、ショーに車で連れて行って貰った。
「ああ。早ように聞いてたら貸したげたのに、去年の暮れにハンコ押してしまいました」
人の良さそうな八百屋さんは、頭を掻いて言った。
「取り消してくださいな。あのままで分けて貰うてもええと思いますねん」
「そら、折角建ったもん壊すのは勿体ないです。あれ、3000万円掛かってますんや。事務所やみなで、1億5000万円」
「へええ。家より高いんですねえ」
「みな頑丈な鉄骨やからね。壊すのは1億」
「まだなん十年も保ちますやん。役所に、取り消すと言うてみてください」
「訊いてはみますけど、無理やろなあ」
  地主がハンコを押したというのなら、もう遅いだろうと思ったが、ショーは、300万円ぐらいで買える筈だと言った。次の日の朝、また八百屋さんを訪ねた。
「やっぱり、あかんそうです。次に借りる会社と契約したそうで…」
「あのまま使いたかったんですのにねえ。壊すのが2000万円とか、聞きました」
「いいえ。壊すのはもっとでしょう。あの周辺の田んぼも入れて1万坪更地にするそうで、1億掛かるということです」
「なんの会社が来るんですか」
「さあ。とにかく、貸し賃が1か月10万円で、10年契約です」
 1カ月10万円とは、すごい。300坪が10万だったら、100坪で3,3万円。1000坪で33万円。1万坪で330万円。1年だったら3960万円。建物、設備、車、人件費、なんにも作らなくても、最初から5億ぐらいは掛かってしまう。
 温室から1反ほど離れた畑約300坪を無料で借りていた人が、地主が「1年で10万円にする」と言ったから「アホか」と怒って返したと言っていたけど、1か月10万円で借りる会社があるだろうか?
 



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