日暮れて道は遠し

絵の具の値段と、その背景 

2016年11月19日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し

画材店で絵の具を販売していますが、ときどき絵の具の値段について、「え!そんなに高いものだっけ?」とお客さんから驚かれることがあります。「そうなんですよ、この絵の具は高いんです」と了解をもらいます。ついでに、「鮮やかなきれいな色はたいてい高いのです。白とか黒とか、茶は安いんですが・・・」 絵の具の構造というとヘンですが、絵の具はどのようなものであれ、2つのものの混合物です。ひとつは色を出す顔料、もうひとつは展色材というものです。単純化していうと、絵の具とは、粉である顔料を、接着剤であり固定材である展色材に練りこんである練り物です。顔料に関しては、これは油彩でも水彩でもアクリルでも、みな同じ素材です。なにか違うものが入っているように感じますが、同じなんです。たいていは金属化合物の固体を粉砕して粉にしたものです。 絵の具の名前で、カドミウムイエロー(黄)というと、硫化カドミウムの粉末で、バーミリオン(赤)の場合は、硫化水銀です。フェルメールの『真珠の首飾りの少女』の絵画で、少女が着用しているターバンの色として有名な「フェルメールブルー」という色は、宝石のラピスラズリを粉砕して精製したウルトラマリンから得られたものです。宝石を砕いてしまうのですから金持ちでないと、そんな絵の具は使えませんね。 前日のNHKのTV番組で放送されていましたが、伊藤若冲が『群魚図』で使った青色を、蛍光X線分析で調べたところ、鉄が検出されたとのことで、結局、入手が難しかった思われたプルシャンブルーであると確認されました。当時、鍋島藩しか所有していなかったものを、いかにして若冲が入手したのかが謎とのことでした。 このような背景により、顔料の素材により価格はさまざまですが、きれいな色を出す顔料は、宝石にもなりうるもので当然価格も高い傾向にあります。このような事情を反映して、たいていの普通の絵の具は、ランク分けされて販売されています。ここで普通のというのは、油彩絵の具、水彩絵の具、アクリル絵の具その他で、フェイクの絵の具を含まない場合です。 絵の具のメーカにもよりますが、たいてい6〜8ランクに分けられて、最安値の絵の具と最高値の絵の具は、4倍弱ほどの価格差となっています。 フェイクの絵の具といいましたが、実際こういったものがあるのです。高くて絵の具が買えないよ〜という声があるので、安い顔料も開発されました。高い顔料と同じ色味を出す安い顔料で作られていて、絵の具のチューブの名前をよく見ると、色の名前の後ろに「ヒュー」という接尾語がついています。コバルトブルーヒュー、バーミリオンヒューといった具合です。ヒューとは、同じ色味のという意味でまがい物ということになりますが、インチキという絵の具ではなく、しっかりとメーカーが保証した使える絵の具なので心配はありません。ただヒューはやはり本物に比べるとね〜と違いが分かっているお客さんもおられます。 最後に、展色材の話ですが、これは実に単純で、以下のような構成です。 油彩絵の具:植物油のリンシードオイル(亜麻仁油)が多い。ケシ油も。 水彩絵の具:アカシア科の樹木の樹脂のアラビアゴム アクリル絵の具:アクリルのエマルジョン液(注) テンペラ絵の具:卵 日本画:膠(動物の骨とか皮)などです。展色材は、顔料と並んでとても重要な絵画の要素なのですが、あまりふだんは意識していませんね。油彩絵の具のこってりとした豊かな味わいは、油による質感です。水彩画のさらっと明るい雰囲気は、紙の上に展開された顔料の鮮やかさにも依存しています。それぞれ展色材が異なると、まるでちがう芸術に変化するように感じます。 (注)アクリル絵の具に関してはちょっと特殊で、顔料をアクリル樹脂の細粒に包んであって、それを水の中にエマルジョンという形態で分散させたものです。牛乳と同じで、油成分が細かい粒子状になって水に溶けています。水分があるうちは水でどのようにも溶解できますが、乾くと樹脂が結合してアクリル板と同じような強固な膜になります。使った筆をそのまま乾かしてしまうと、筆は硬い棒になってしまいます。

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