雑記帳

幽霊と未亡人 

2014年08月18日 ナビトモブログ記事
テーマ:映画

20世紀初頭のイギリス。
海辺の家に若く美しい未亡人ルーシー・ミューア(ジーン・ティアニー)が幼い娘と家政婦を連れて、引っ越してきた。
しかし、この家は以前住んでいて自殺したダニエル船長(レックス・ハリスン)の幽霊が出ると評判の家であった。
案の定、ダニエル船長はルーシーを家から追い出そうと彼女の前に現れたが、勝気なルーシーは幽霊の恐怖に怯えずに船長に立ち向かう。
やがて2人は反発し合いながらも徐々に親しくなっていくのだが・・・。

ーネタバレありー







この作品は未亡人と幽霊とのラブロマンス・ファンタジーです。
ラブロマンスといってもルーシーーと幽霊のダニエル船長はベタベタしないプラトニック・ラブな関係です。
前半・中盤は洒落た会話が楽しいコミカルな感じなのですが、後半の方は一転して人生の無常な流れを感じさせてくれるクラシック映画らしい、とてもしっとりとした余韻を漂わせてくれる映画です。

配役が魅力的です。
ミセス・ルーシー演じるジーン・ティアニーは、すごく上品で洗練された未亡人にぴったりで、彼女の出で立ちや振る舞い、しゃべり方などロンドンの中流階級(多分?)の古き良き奥方って感じでエレガントです。

そのくせ、頑固で傲慢なダニエル船長に対しては負けずに大ケンカする気の強さも持ち合わせています。

きっとこの時のルーシーは旦那さんが死んで1年が経ち「新しい人生を再出発しなくちゃ!」という女性のたくましさが現れたのだと思います。
「過去をふっ切りたい!」といってみれば“自立する女のハツラツさ”がルーシーに開放感をもたらして、彼女が生き生きと見えるのでしょう。

ダニエル船長演じるレックス・ハリソンも役にハマリきっています。
海の男でごうまんだけど粗野な男らしさがいいです。
それにしても憎たらしいオッサンです。
突然、嵐と共に現れて「ワハハ!」と笑い、命令調の語り口でしゃべりまくる。
それも船乗り特有の(?)女性蔑視まるだしの毒舌ぶり。
おまけにルーシーの着替えはしっかり覗く下品さです。

きっとルーシーが今まで知っていた都会の平凡な男性とは、全く違うタイプだったのではないでしょうか。
嫌な奴だけど、どこか味があって憎めないダニエル船長。

ルーシーは初めて家の中で、船長の自画像を見た時から、彼に惹かれてしまったのでは?というほどダニエル船長=ハリソンの目つきはすごくセクシーです。
あの眼で見つめられたらドキドキしてしまいます。

中盤はルーシーの前にジョージ・サンダース演じる軽薄なプレイボーイが登場します。

この男はただの女たらしなのですが、ルーシーは船長に惹かれながらも彼と再婚しようと決めます。

この辺りはちょっと考え深いものがありました。

船長といる時は楽しいけれど、彼は生身の人間ではない幽霊。
ほんの1年前に夫を亡くしたばかりのルーシーの心に、不安がかられるのも無理はないでしょう。
船長は幽霊なのですから。
現実に生きているルーシーには自分を抱きしめてくれる男性が必要だったと思うのです。

哀れにも、その夢は無残にも裏切らます。
悲嘆に暮れるルーシー。

もうダニエル船長は以前のようには現れてはくれません。
ルーシーに「人生を一人でまっとうしろ!」と厳しく示すかのようです。
私が船長ならルーシーが失望した時、現れるのに・・・と作品を見ながら思ってしまいました。

けれど最後に、とてもロマンチックなシーンが出てきます。
「ああ、なるほど・・・。監督はこういう風にしめくくりたかったのか」と納得しました。

2人は長い時を得てようやく自由に素晴らしい世界を見に行くのでしょう。

背景の景色、特に海の映像とバーナード・ハーマンの幽霊めいた神秘的なメロディもとてもいいです。
昔の映画は凝ってます。

一度は素敵な幽霊に出逢ってみたいものです。



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