雑記帳

舞踏会の手帖 

2014年08月13日 ナビトモブログ記事
テーマ:映画

イタリアのコモ湖畔の城に、30代半ばの女性、クリスティーヌ(マリー・ベル)は住んでいた。
彼女はたった今、夫に死なれたばかり。
ある日、クリスティーヌは身の周りの整理をしていると1冊の手帖を見つける。
それはクリスティーヌが初めて16歳の時に社交界デビューした夜の舞踏会で、彼女に愛をささやいた男たちの名前が記してあった手帖であった。
クリスティーヌの心に20年前の美しい幻想のような舞踏会が蘇ってくる。
彼女はその後の男たちを訪ねて旅に出るのだが、彼女を待ち受けていたものは・・・。

ーネタバレありー






なんとも、不思議でロマンチックな作品です。
この作品は美しい未亡人となったクリスティーヌと、愛をささやいた8人の男たちとの再会の物語です。
オムニバス形式なのでロマンチックミステリーな短編小説を、映画で見てるような感じがします。

最初に訪ねた男は既に20年前に、死亡してます。
死因は自殺。
クリスティーヌに恋人ができた事での絶望死です。
クリスティーヌは亡き息子の亡霊と暮らす母親から、その事を知らされます。
フランソワーズ・ロゼーが扮してます。
その姿は哀れな母親そのものです。

次に出会った男(ルイ・ジューヴェ)は、いかがわしいナイトクラブを経営していて、すっかりクリスティーヌと出会った頃とは変わっていました。
男は昔、クリスティーヌにヴェルレーヌの詩をささやき、彼女を口説いたほどのインテリでした。
今は悪党になり果てて、クリスティーヌの目の前で逮捕されてしまいます。

「凍てつける公園を、 影ふたつ過ぎ去りぬ」と彼女にささやいた青年はもうそこにはいないのです。


3人目の男(アリー・ボール)は当時40歳くらいのピアニストでした。
男は既にピアノを辞めて、今は聖職者となり、修道院で子供たちに歌を教えてました。
男は、昔の思い出をクリスティーヌに話します。
愛する女性のために捧げた演奏を聴いてもらえず、その愛に絶望して自殺未遂をしたこともあったと・・・。
この男もクリスティーヌを想う余り、犠牲となったのです。

こうして、クリスティーヌは再会する男たちから、その度に悲惨な現状を見せつけられるのです。

ここまで書くとクリスティーヌという女性、普通は性悪女のイメージですが、マリーベルの毅然とした美しさと明るさのせいか、彼女に悪女という印象は感じません。

あるのはとても摩訶不思議な?女性ということです。
なぜ彼女は16歳の思い出を探しに旅に出たのでしょうか?
クリスティーヌにとって初めての舞踏会とは一体、何だったのでしょう・・・。

「モスリンのカーテン シャンデリアの輝き 純白のドレス 何もかもが素敵!」

クリスティーヌは舞踏会の思い出を余りにも美化してたことにようやく気づきます。

それが単なる幻想と気がつくのは、7人目の男と一緒に20年ぶりに同じホールの舞踏会にいった時です。
そこは、自分の思い描いていたものとは余りにもかけ離れた舞踏会でした。
けれど、彼女の隣にいた16歳の女の子は目を輝かせて、クリスティーヌにこう言うのです。

「モスリンのカーテン シャンデリアの輝き 純白のドレス 何もかもが素敵!」

その女の子は20年前のクリスティーヌ自身でした!!

物憂げで憂鬱なクリスティーヌの旅の果てには、反比例するかのような軽やかなラストが待っています。

「灰色のワルツ」の調べにのって、まだまだクリスティーヌの舞踏会は続いているようです。



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR





上部へ