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動物達の夏祭り　

2018年06月09日
テーマ：小咄

人里離れた森
人跡未踏の地がある
人が誰も知らない場所がそこにはある
今時そんな所はないと言われても現実にあるのだ
知らないだけだ

この時期、動物達が集まって夏祭りが催される
夏と秋の年二回だ

森の中の大きな広場に皆集まってくる

今年も無事開催されることになった

世話役の筆頭は古タヌキの親爺である

「さ〜祭りの始まりだ〜」
太鼓腹を打ち鳴らして始まった
「ポンポコポン！」

野良猫、イタチ、クマ、ネズミからスズメ、カラスまで
ほとんどの動物達が集まってにぎやかだ
この時ばかりは無礼講
天敵関係も存在しない
例えばフクロウもネズミを襲って食べたりしない
暗黙の了解で成り立っている
森に平和が訪れる
皆が毎年楽しみにしている夏祭り（夜祭り）だ

不思なことに飼い犬もこの時は
縄抜けしてやって来る

さて森の大きな広場やけもの道に露店、夜店が立ち並んでいる
木の枝に提灯の灯り、木々の間にも店、休憩所があって
念が入っている

大きなテントの中にはB級グルメ店もたくさん出店

キツネ「美味しいよ〜きつねうどんはいかが〜おいしい稲荷寿司もあるよ〜」
「お客さんおいしいかって？京都の伏見稲荷様のお墨つきのいい味だよ。そんなキツネにつままれたような顔をしちゃだめだよ〜」

店先ではネコ達が客引きで頑張っている
ネコなで声で客を手招きする
それに惹かれててネズミの集団が注意深く店内を覗く
「何がおすすめでちゅう〜か？」
「そうですね、ウサギさんところの月見団子やお餅も
にゃんとも言えぬ味わいがあって人気ですよ」

そこで、ウサギの店先にいってみた
ウサギが月明かりを浴びて餅つきの最中
「いらっしゃい！何にしましょう？」
「餅と団子の詰め合わせをください」
「大きさはどうしましょう？」
「中を人数分ください」
「何匹いらっしゃるのかな〜？チュ〜チュ〜たこかいなぁ〜、みんな動いて数えにくいな〜」
「そうですか、ネズミ算で計算したらいいですよ！」
「・・・」


こちらでは隣同士
イヌのわんこそば屋と
タヌキのたぬきそば屋が競い合って威勢がいい
「うちのソバはワンダフルだよ〜」
「我輩の店のそばは他に抜きんでた味だよ〜」

ロバのパン屋さんではお馴染のあの曲が流れています

スズメ達は休憩所をやっています
「すずめのお宿」〜茶菓子はすずめの卵

中の座敷では麻雀する客もいる
スズメ「その中（チュン）当たりぃ〜ロン！」
カモの旦那「又、大三元振り込んだ！」
好きなくせに弱い旦那は今回もカモにされてます
カモの旦那「支払いはネギでもいいかい？」

イノシシやシカはあちらで花札遊び

人（？）ごみから離れた薄暗い大木の陰には
あやしい人影が、いやもとい、鳥影が
「お兄さん遊んで行かないかい、安くしとくよ〜」
夜鷹のおタカ姉さんである
マガモの兄さん「カモられないかい」と真顔で聞く
おタカ姉さん「いい仕事するわよ」
ここでもカモになる
鴨一族はどこでもカモになる習性があるようだ
そこがトリえでしょうか？

どこにも柄の悪い奴はいるもんで
「やい！気をつけろ、俺にガン飛ばしたな〜」
威勢のいい雁のお兄いさん

近くの土手では酔っ払ったツルとカメが滑った〜
後ろの正面には誰がいたのかな？

古タヌキの親爺さんは毛氈を敷いて
野点を催しています
「これが先祖伝来のぶんぶく茶釜でございます。これにて沸かした湯で入れたお茶、また格別でございます」
客の鳥達は十羽一絡げで口々に
「ちょう美味い」
その内、親爺さん「こいつらうるさいな」と
あきれてタヌキ寝入りしてしまった
鳥達はヒバリであった
ピーチクパーチクうるさい事やかましい事！
「あら寝ちゃった。タヌキ抜きでお茶しましょう」

遠路はるばるの動物達も多く集まって来ています
病気やお年を召して足の悪い者もいます
そんな動物に重宝されているのが
おサルのカゴ屋さんです
小田原提灯ぶら下げてぇ〜♪

こうして楽しい森の夜は更けていくのです

夏、里山に行った時、夜風に乗って楽しい声が
聞こえて来た時
それは空耳ではありません
あなたの知らぬどこかで
動物達の夏祭りが行われているのです

・・・・・・

音楽タイトルは「ハリネズミのワルツ」

https://www.youtube.com/watch?v=S_1q7Q5DX78
Daniel Colinのｱｺｰﾃﾞｨｵﾝ演奏で有名な曲です
３人組の演奏は映像がまるで絵画みたいな感じ
最初見た時は「絵」かと錯覚しました

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