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実物の岸　恵子さん　

2015年09月03日
テーマ：暮らし

岸恵子「わりなき恋」の朗読会に
行ってきた。

かつての銀幕のスター女優とはいえ、
東京西北に位置するT市の会館での
公演である。
大ホールがいっぱいになるはずが
ないだろうと、思っていたが…
ここにも我ら世代、さらに上の年代の
多くの男女（男女比8.5：1.5）で、席が
埋め尽くされていた。

さすがの高齢化社会、何処に行っても
元気なシニア世代ばかりである。

グランドピアノとベンチが置かれ、
霧のようなスモークを流しただけの
簡素な舞台設定である。
どんな朗読会だろうと思っていると…

作家であり、かつての日本映画界を
牽引してきた女優の肩書を持つ岸恵子さんが
登場するや、そこは「岸　恵子だけの世界」
に引き込む力を、持っておられるのである。
さすがである！
82歳・岸恵子さんは健在なりである。

2013年3月に上梓された「わりなき恋」の
「わりなき」とはと、ご本人もおっしゃ
っていたが…

「理屈や分別を超えて、どうしようも
ない」ことを意味するという。
恋は、そうやって湧き出てくるモノだと。

物語の主人公は70歳を少し越えた女性で
彼女とは一回りも年下の妻子ある男性との
「どうにもならない恋、苦しくて
耐えがたい焔のような恋」を軸にした、
切なさが身にしみる話であると…。

そうしたご自身の想いを添えながら
本の朗読を進めていく。

「老いらくの恋」とか「年甲斐も無く」の、
そんな安易でチープな言葉をもって評する
には、作者が数年も掛け、言葉を選びぬいて
書いたその思いを冒涜するような気もする。
世間に氾濫する男と女の「不倫物語」とは
まったくレベルが違うことを、読むほどに
知ることとなる。
岸惠子の筆は、主人公の70歳からの恋心を、
そして久しぶりに眼の前に表れた男性、
九鬼謙太との性愛を、甘い砂糖漬けのような
きれいごとに終わらせてはいない。

私もこの本を読んだ時、老いて行く女体と
心情のバランスをどのように表現している
のかに、興味を持った。

彼女は、その行為に抗うというよりは
恥を掻きたくなかった。
女としての体が昔のままでいるわけがない。
それを知りたくなかったし、知られたく
なかったと…、こう述懐した文章に、
私は胸が詰まる思いで読んだものだ。

主人公は婦人科を受診して、この12歳
年下の男性を受け入れることになる。

年齢だけ見れば、すでにシニアである
二人の交わす最初の行為は、夫を亡くした
後の30年余年という『かくも長き不在』に
よって、すんなりと彼を受け入れることは
出来なかった。
…朗読でも、あのちょっとハスキーな(?)
声で、こう表現していた。


そして…最後15分ほどのトークショーで
現在82歳になられた岸恵子さんは、こう話を
結んでおられた。

‘60代70代だからこそ、このような
「わりなき恋」をしてほしい’と、変わら
ない美しさと気高さ、凜とした表情、
姿勢で、おっしゃっていた。

昨日も先輩年代の女性の生き方を
見せていただき、また「３K」をいただいた。

「３K」とは…勇気・元気・本気。
（運命鑑定時に私がよく使う語句）

*帰りに「30年の物語」を買い求めた。

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