星野「仙さん」と原「若大将」の日本シリーズ

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2013年10月23日ナビトモブログ記事
テーマ：人生

　いよいよ来る10月26日から、プロ野球の日本シリーズが始まる。

　セリーグのクライマックスシリーズ優勝の巨人は、2年連続34度目の日本シリーズ出場だ。対するパリーグ優勝の楽天は、創設9年目にして初優勝だから、もちろん日本シリーズは初出場である。

　2年連続34度目の巨人と創設9年目にして初出場の楽天の対戦では、一瞬、巨人のものだなという先入観念を持ちそうになる。

　しかし、そうは問屋が卸さない。楽天の監督は、あの闘将、星野仙一監督だ。

　星野仙一監督、1947年生まれの66歳。監督として、昨シーズンまでで、中日で2回、阪神で1回のセリーグ優勝を果しているものの、日本シリーズでは敗れ、日本一になった経験がない。

　対する巨人の原辰徳監督は、1958年生まれの55歳、星野監督より11歳若い。選手としても監督としても、巨人一筋であり、今は、二度目の監督を務めている。
　昨シーズンまでで、5回のセリーグ優勝を成し遂げ、うち3回は日本一に輝いている。

　
　往事を知る者にとっては、「仙さん」こと星野監督と「若大将」こと原監督の対決は、両チームの活きのいい選手同士の対決と相まって、誠に興味深い。

　今からちょうど10年前の2003年10月7日、ところは阪神甲子園球場。伝統の巨人阪神戦がシーズン最終戦を終えた。巨人の原辰徳監督が戻ってくる選手たちを出迎え、労をねぎらった後、ダッグアウトに戻ろうとした。

　その時だ。

　ハラ!、ハラ!、の声。原監督がその声の方に振り向いた。
　ハラ!、ハラ!、ハラ!、と一塁側の阪神ファンから声援が巻き起こり、球場を埋め尽くしたファンからの大声援がこだました。

　誰かからのシグナルに気づいた原監督がマウンド方向に向かって歩く。

　逆方向からは、阪神の星野仙一監督が歩を進める。なんと、星野監督は、片手に花束を抱えているのだ。

　マウンド近くで、星野監督が原監督に花束を渡しながら、言葉をかけた。

　　　　ご苦労さん
　
　　　　これからだぞ!

たつのり

　　　　いいか

　　　　くじけるなよ!

　　　　必ず帰ってくるんだから

　　　　たつのり

原監督は、星野監督からの言葉の一語一語に頷く。
　
　両監督が肩を抱き合う。原監督は、流れ落ちる涙を拭おうともしない。

　セレモニーが終わり、両チームが散会し始める。

　最後に、離れたところから、原監督が帽子を取って星野監督に別れを告げる。
　　　　
　星野監督も、帽子を脱ぎ、深々とお辞儀をする。

　前年の2002年に44歳で一度目の巨人監督に就任した原監督は、1年目でリーグ優勝した。日本シリーズでは、西武を相手に球団史上初の4連勝で日本一に輝いた。

　しかし、翌2003年は、3位に終わり、当時の球団代表との確執もあり、解任されたのだ。「人事異動」というわけの分からない理由づけがなされたが、実際のところは、解任だ。

　監督一年目で日本一になり、二年目も悪いにしても3位確保の「若大将」を解任するやつがどこにいる。
昔も今も、フロントと称する球団の背広組のアホさ加減には、困ったものだ。

　実は、原監督が解任された2003年は、阪神監督就任2年目の「仙さん」率いる阪神が18年ぶりにリーグ優勝した。日本シリーズでは、王貞治監督率いる福岡ダイエーホークスに3勝4敗で敗れて、日本一はならなかった。日本シリーズ終了後、星野監督は、高血圧症による体調不良を理由として、阪神監督を退任した。　

　2003年の秋に、解任された「若大将」を激励してくれた「仙さん」、涙を拭おうともしないで感謝感激のハグで応えた「若大将」。この2003年をもって、二人とも、監督を退任したことになる。

　あれから、10年の歳月が流れた。両雄は、日本シリーズという最高の舞台で雌雄を決する。

　あの時、「仙さん」は、「若大将」に最後に「必ず帰ってくるんだから　たつのり」と声をかけた。
あれは、単に「若大将」に監督として復帰して来いよ、ということではなく、監督同士で再び相まみえよう、という男と男のメッセージだったのだろう。

　そして、今まさに、最高の舞台が用意された。

　野球の神様は、またまたどえらいドラマをご用意なさったものだ。ありがたいことに。

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