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「原発事故賠償金の原資回収の怪」 

2013年10月20日 ナビトモブログ記事
テーマ:暮らし

 原発事故による損害賠償金については、原子力事業者が無限責任を負うものであり、国民負担はあり得ない。

 我が国の原子力損害賠償制度は、「原子力損害の賠償に関する法律」(以下「原賠法」という。)により、その基本的枠組みが定められている。

 原子力事業者は、原子力損害について、故意又は過失の有無にかかわらず、賠償責任を負うこととされている。
 原子力事業者の責任には、限度が設けられておらず、無限責任となっている。

 だから、福島原発事故による損害賠償金については、東京電力が無限責任を負う。

 一方、原賠法第16条では、国の措置として、政府は、必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行うものとする旨、そして、その援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行うものとする旨が定められている。

 政府が行うのは、必要と認める援助であり、原子力損害賠償制度の本質に照らせば、その主なものは、原発事故の被災者を迅速に救済するための損害賠償金の支払いに係る資金手当である。

 そこで、国は、官民出資による原子力損害賠償支援機構(以下「機構」という。)を発足させ、損害賠償金の支払いに係る資金手当として5兆円を上限とする交付国債と呼ばれる国債を機構に交付した。

 
 次に、この資金の流れを説明する。
? 東電は、損害賠償金の支払いで必要になった金額を機構に請求する。
? 機構は、その額について国債の償還、つまり現金化を政府に請求する。
? 政府は、国債の償還として機構に渡す現金は、金融機関からの借入金により調達する。借入金は、有利子だから、政府は、金融機関に利息を支払わなければならない。
? 東電は、機構から受け取った現金で損害賠償金を支払い、その分については、将来、利益から返さなければならない。

 要は、福島原発事故による損害賠償金については、東京電力が無限責任を負うが、それが巨額であり、原発事故の被災者を迅速に救済するために、資金手当として、国が損害賠償金原資の立て替えを行うものである。
 国が賠償金原資の立て替えに要した一切の費用は、将来、東電から回収する。東電は、利益から返す。


去る10月16日、共同通信からの配信ニュースが流れた。「原発事故、国民負担794億円に 賠償金回収に最長31年」の見出しがついている。

 我が目を疑った。福島原発事故による損害賠償金については、原子力事業者である東京電力が無限責任を負うものであり、国民負担はあり得ないからである。

 配信ニュースの記事は、次の内容である。
? 東京電力福島第1原発事故への賠償交付金として、国が原子力損害賠償支援機構を通じて東電に援助する額が上限の5兆円に達した場合、全額を回収し終わるのは最長で31年後の2044年度になるとの試算結果を会計検査院が16日、公表した。
? 5兆円は機構に国債で交付するため、借り入れた国が利息を支払う。実質的な国民負担は計794億円に上る。

 政府は、機構からの請求に基づき、国債の償還として機構に渡す現金は、借入金により有利子で調達するから、利息を支払わなければならない。

 しかし、その利息がなぜ国民負担になるのか。国民負担ということは、国民が税金で支払うことを意味する。冗談じゃない。その利息は、国民負担ではなく、当然、東電が負担すべきものだ。

 誰でも簡単に分かることだ。
 機構という組織を作らずに、東電が単独で借入金による資金調達をして損害賠償金を支払う場合、利息は、当然、東電負担だ。

 それが、原発事故の被災者を迅速に救済するため、機構という組織を作って、国が資金手当の支援をする形を取ったとたん、利息が国民負担になるという理屈がどこにある。

 配信ニュースの記事を書いた共同通信の記者は、おかしいと思わないのか。

 今の場合、利息負担が794億円であろうが、1億円であろうが、いや、1円たりとも国民が税金で支払う理由はない。

 政府が行う援助としては、原子力損害賠償制度の本質に照らせば、原発事故の被災者を迅速に救済するため、損害賠償金原資の立て替えを行うことが必要かつ十分なものである。

 そして、国が東電から回収すべきは、損害賠償金原資の立て替えに要した一切の費用であり、借入金による原資調達の利息は、当然、含まれる。


 物事を判断するに当たっての大事な基準は、円満な社会常識である。

 円満な社会常識によれば、原発事故による損害賠償金について、国民負担はあり得ない。

 国民負担ということは、国民が税金で支払うことだ。国民がといったが、国民とは、納税者である私たちがということだ。

 原子力事業者である東京電力が起こした原発事故による損害賠償金をなぜ私たちが支払わなければならないのか。

 という設問について、はい分かりました、支払いますという国民がいるだろうか。

 指摘したような問題意識をなぜ持たないのだろうか。

 私が共同通信の記者だったら、会計検査院が公表した内容を記事にするとともに、「実質的な国民負担は計794億円に上る」と単純に書くのではなく、「会計検査院が実質的な国民負担は計794億円に上るとしているが、本来、国民負担はあり得ない。そもそも」という論陣を張る。

 しかし、会計検査院も会計検査院だ。君らは、おかしいと思わないのか。会計検査院は、単なる数字確認をする役所ではなく、違法不当な会計支出を摘発する使命があるじゃないか。

 重ねて申し上げる。円満な社会常識によれば、原発事故による損害賠償金について、国民負担はあり得ない。

 国の役人、国会議員、政府首脳、みんながこうした社会常識が分からないとすれば、我が国は、無責任国家日本だ。





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