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「黒石のわさお」のお伊勢参り 

2013年10月19日 ナビトモブログ記事
テーマ:人生

 わさおは、大柄の丈夫な秋田犬(あきたいぬ)だ。秋田県の人々は、「あきたけん」とは呼ばない。誇らしげに、あるいは頑固に、「あきたいぬ」と呼ぶ。  

 わさおは、それなりに太っていて、白い毛がふさふさしている。
 デカイ顔の真ん中から少し下にダンゴ鼻があり、そのちょっと上につぶらな瞳が並んでいる。
 ダンゴ鼻の下には、秋田犬(あきたいぬ)らしく、笑った雰囲気で舌を見せている

 そんなわさおは、ブサカワイイ人気犬だ。自分の主演映画まである。その主演映画は、その名も「わさお」で、2011年3月5日から公開された。

 映画「わさお」の公開に先立って、宣伝のために、わさおは、女優の薬師丸ひろ子さんと共にテレビ番組に出演した。薬師丸ひろ子さんは、映画で飼い主の菊谷節子さん役を務めたのだ。

 わさおが住んでいるのは、日本海に面する青森県西津軽郡鯵ヶ沢町。鯵ヶ沢町からテレビ番組に出演のために上京する際の移動手段は、キャンピングカーが使われた。

 わさおは、キャンピングカーに飼い主の菊谷節子さんやスタッフの人たちと乗り、15時間かけて東京に到着した。キャンピングカーでの移動は、わさおがストレスを感じないようにとの配慮だという。

 さすが映画「わさお」の主演スターだけのことはある。


 去る10月4日付けの青森県の地元紙・東奥日報は、「黒石の白犬 お伊勢参り」のタイトルでの記事を掲載した。
 
 それによると、「今も昔も人々がこぞって訪れる伊勢神宮に約160年前の幕末、黒石の白犬もお参りしたという古い記録が残っている。移動距離は往復で2400キロ。伊勢参りの旅人に連れられて出立したらしく、旅先で多くの人の世話になりながら往復3年がかりのお伊勢参りだったという」とある。

 文中の「古い記録」については、「黒石の白犬に関する記録は『西谷家文書』(県立図書館蔵)や、平尾魯仙の『合浦奇談』(弘前市立図書館蔵)、『永代日記』(黒石市・高橋幸江氏蔵)に残る。いずれも1851(嘉永4)年5月、帰還時の様子だ」とある。

 まず、「黒石の白犬」という表現が面白い。宮城県に白石市があるので、「白石の黒犬」という表現が面白いのと同様だ。

 黒石市は、青森県のほぼ中央に位置しており、三方に津軽平野、東に八甲田連峰が連なる自然豊かで豊富な温泉に恵まれた、古くからの城下町である。津軽地方は、津軽藩十万石の領地であったが、その支藩が黒石藩だ。
 十和田国立公園の西玄関口に当たり、味の良い「黒石米」と「黒石りんご」の産地として知られ、人口は36,000人ほどだ。
 黒石市は、大きな街ではないが、約70店舗もの焼きそば屋があり、近年、B級ご当地グルメの「つゆ焼きそば」の街として有名だ。

 その黒石の白犬は、どれくらいの大きさで名前は何というのかは分からない。白犬だから、わさおみたいだ。便宜上ここでは、「黒石のわさお」と呼ぶことにする。

 「黒石のわさお」の記事は、「黒石のわさお」が伊勢神宮までは、お伊勢参りの人が連れて行き、帰りは、一匹でというか一人で帰ってきて、往復3年がかりだったと述べている。

 「黒石のわさお」がいくら優秀でも、一人で伊勢神宮まで行くことはできないから、と書きかけて、でもないか、と思ったりもする。

 それはさておき、「黒石のわさお」は、行きは、お伊勢参りの人が連れて行った。黒石から伊勢までは、片道1,200kmあるという。時速5kmで歩くとして、一日当たりは、実歩時間が6時間だと計30kmを歩くから、片道40日はかかる。これほどの日数をかけてのお伊勢参りだから、江戸時代の日本人がいかに信仰心が篤かったか分かる。

 問題は、帰りだ。いや、問題なのは、帰りだけでなく、行きもだな。「黒石のわさお」は、食べなきゃダメだし、どこかに泊まる必要もある。お金がかかる。お伊勢参りの人が連れて行くとしても、お金まで負担することはないだろう。

 記事によれば、「黒石のわさお」みたいな犬は、お伊勢参りする犬だから、参宮犬と称される。参宮犬は、出身地が書かれた木札と銭が首に巻かれていたという「黒石のわさお」の首には、「津軽黒石」と書かれた木札とお金が入った財布が巻かれているわけだ。

 道中の先々で、人々が「黒石のわさお」に対して寝食を確保して世話をし、首の財布からいくばくかの銭を貰うということだろう。それだけ、江戸時代の日本人は、信仰心が篤く、親切で、犬を可愛がったということだ。「黒石のわさお」の首から財布を盗むなんてさもしいことはしない。

 「黒石のわさお」は、旅先で多くの人々の世話になりながら、往復3年がかりでお伊勢参りを果して帰還した。首には、伊勢神宮の御札が丁寧にくるまれて巻かれている。

 これなら、行きも、お伊勢参りの参宮犬であることの印を明示さえすれば、「黒石のわさお」は、一人でも、旅先で多くの人々の世話になりながら、伊勢神宮まで行ける。

 江戸時代の日本人は、なんて民度が高い人々なのだろう。そして、往復3年がかりでふるさとに帰ってきた「黒石のわさお」は、なんて利口なのだろう。


 わさおの飼い主の菊谷節子さんは、わさおに江戸時代の「黒石のわさお」の話をして聞かせた。

 そして、わさおに聞いた。「わさお、わさおは、一人で伊勢神宮まで行って、お伊勢参りしてきてね、って言われたら、できるよね」

 (そりゃ、できるよ。俺は、ブサカワイイ人気犬のわさおだもの。「黒石のわさお」みたいに「津軽鯵ヶ沢」と書かれた木札とお金が入った財布を首に巻きつける必要もないよ。「お伊勢参りのわさお」と書かれた木札を首に巻きつけさえしとけばいい。全国のわさおファンがみんなしてボランティアでリレーしてくれて、寝食も世話してくれる。それで、伊勢神宮まで行って、お伊勢参りして帰ってこれるさ、あっという間だよ)とわさおは思った。

 (しかし、それじゃ、あんまり簡単すぎて、「黒石のわさお」にも江戸時代の心優しい人々にも申し訳ない)と思い返した。

 「分かりません」と、わさおは菊谷節子さんに答えた。

 わさおは、あくまでも先輩を立てるのだ。そうしたわさおは、利口で、やっぱりブサカワイイ。




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