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「ふるさと考」 

2013年10月17日 ナビトモブログ記事
テーマ:人生

 不来方のお城の草に寝ころびて
 空に吸われし
 十五の心

 漂泊の詩人、石川啄木さんの短歌であり、三行詩である。

 啄木さんの生涯は、1886年(明治19年)2月20日-1912年(明治45年)4月13日の26年間という短いものであった
 
 「不来方」は、「ふらいほう」と読むのではなく、「こずかた」と読む。
 岩手県の県庁所在地の盛岡市。その盛岡という都市名で呼ばれる前の呼称が不来方であった。
 昔々、南部藩の本拠地は、青森県の三戸(さんのへ)から盛岡に移されたが、その当時の盛岡の呼称は不来方であり、お城は不来方城である。

 私は、数多くある石川啄木さんの名作の中で、この「不来方のお城」の歌が一番好きだ。

 「不来方のお城の草に寝ころびて」
 盛岡中学の生徒である啄木さんは、学校の近くにある盛岡城趾の草原で仰向けに寝ころんだ。桜の樹々越しには、真っ青な天が広がっている。
 
 「空に吸われし」
 自分そのものが天空に吸われていくような気分。大変にいい気分だ。「吸われし」だから、その時の情景を思い出しているのだ。

 「十五の心」
 盛岡中学の生徒である十五歳の啄木さんの心。そこには、屈託のない啄木さんの微笑みがある。

 26年間という短い生涯の啄木さんがこの歌を詠んだのは、成人後で流浪の苦しい状況の時だろう。「十五の心」の頃は良かったなあ、と懐かしみ、ふるさとを思っている。
 ご自分が間もなくして生涯を終えるであろうことは、 知る由もない 。
 啄木さんの生涯で「不来方のお城」の頃が最も幸せだったろう。


 先日、日がな一日、ネットで遊んでいたら、「私には故郷がない」とのブログ記事に出くわした。
 
 曰く、「私にはふるさとがない。そう思ってずっと生きてきた。東京生まれで東京育ちの私は、大学時代に、地方から東京に出てきて、また地方へと帰っていく友人たちを見るにつけ、故郷があるっていいなあ、とうらやましく思っていた」

 この記事を見た瞬間、私の頭の中で、漫才師の大木こだま・ひびきさんの得意ギャグが炸裂した。「そんな事はないだろう」
 数年前に、大阪のなんばグランド花月で大木こだま・ひびきさんの漫才を生で観た。「どやさ」のオバちゃんたちも面白かったが、こだま・ひびきさんも負けず劣らず、面白かった。大阪は、面白い街や。

 石川啄木さんが詠む「不来方のお城」は、東京生まれで東京育ちでなかろうがあろうが、誰にでも必ずある。

 例えば、東京の下町だ。生まれも育ちも葛飾柴又の寅さんにとって、帝釈天や矢切の渡しが「不来方のお城」だ。

 「私は下町でなく、六本木なんですけど、どうなんでしょうか」と茶化す声が聴こえる。
 あるとも。六本木ヒルズに住んでいる人にとっては、さしずめ毛利庭園が「不来方のお城」だ。

 そして、その人にとっての「不来方のお城」がある辺り一帯がふるさとなのだ。

 
 「ふるさとは遠きにありて思ふもの」と歌ったのは、室生犀星である。しかし、ふるさとは、遠きにありても、近きにありても、否、ふるさとそのものにありても思うものである。

 これは、石川啄木さんにも当てはまる。盛岡で生活していたときも、青森県や北海道を流浪したときも、東京で食い詰めたときも、啄木さんは、「不来方のお城」がある辺り一帯のふるさとをいつも思った。

 ふるさと思い涙ぐむのは、遠きにありてだろうが、涙ぐんでも涙ぐまなくても、人は、常にふるさとと共にある。ふるさととは、そういうものだ。

 ふるさとを離れた人にとっては、ふるさとは、自分が帰れるところである。自分のスタート地点である「不来方のお城」には、いつでも帰れる。帰れば、誰かしらが迎えてくれる。ふるさととは、そういうものだ。

 ふるさとを離れずに生活を続けている人も、例えば、2万キロ離れたところに生活の本拠を構えた人も、ふるさとを思う気持ちは同じだし、ふるさとの八百万の神様たちは、両者を分け隔てなく、見守っていて下さる。ふるさととは、そういうものだ。

 


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こんにちわ〜

さつきさん

私は先日故郷へ帰省してきました。

私も思います、故郷がないと良く耳にしますが。
生まれた所が故郷かと、だれかしら、出迎えてくれる

私は此方にきて4年ですまだ、故郷は懐かしいです。

涼しいと云うか、さむいほどに感じます。
風邪には気をつけましょうね。

2013/10/18 14:13:42

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