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アメリカ債務上限問題　

2013年10月10日 ナビトモブログ記事
テーマ：暮らし

　アメリカ人は、チキンつまりニワトリの肉など、鶏肉料理が好きだ。ローストチキン、フライドチキン、チキンナゲット、チキンカツレツなどなど。

　しかし、アメリカ人が好きなのは、チキン料理だけでない。チキンレースもよほどお好きなようだ。

　チキンレースというから、ニワトリを走らせる競争かと思ったら、そうではない。
　英語のスラング・俗語で、チキンとは、臆病者のことを蔑んでいう言葉だそうだ。なぜ、ニワトリと臆病者が結びつくのか。

　人間は、怖気づく(おじけづく)、つまり怖がって縮みあがると、鳥肌がたつ。このときの態様がニワトリの羽根をむしった状態と同様であること。ニワトリがキョロキョロとせせこましく動き回る様子がビクビクしている臆病者を連想させること。こんな理由から、臆病者のことをチキンというのだそうだ。

　で、チキンレースとは、どちらが憶病者であるか、換言すれば、どちらが度胸があるかを試す競争を指す。
　例えば、２人が断崖に向かって同時に車を発進させる。先に車から飛び降りた方が負けだ。しかし、相手が勝っても、車から飛び降り損ねると、車ごと転落して死ぬ。

　しかし、どちらが憶病者であるか、あるいはどちらが度胸があるかを試す競争として、チキンレースをするというアメリカ人の発想自体がおかしい。
先ほどの例の場合、チキンレースの勝者に待っているのは、かなり高い確率で車ごとの転落死だからだ。そんなリスクを冒してまで、チキンレースをするのは馬鹿げている。

　アメリカの連邦議会は、上院が与党の民主党、下院が野党の共和党がそれぞれ過半数を占めるというねじれ状態だ。しかも、両方の議決が食い違ったときに、どちらの議決が優先するかといった決まりがない。

　与党の民主党と野党の共和党が歩み寄って、両院の議決が一致しない限り、物事が決まらない仕組みなのだ。

　このねじれ状態のゆえに、アメリカでは、10月1日からの新年度予算が成立していないため、同日以降、政府機関の一部が閉鎖された状態が続いている。新年度予算が成立しないのは、医療保険制度の抜本的改革を推進するオバマケアと呼ばれる施策に共和党が反対しているからだ。

　民主党と共和党のどちらも、先に折れた方が憶病者呼ばわりされて負けとなることを嫌って、あるいは先に折れなかったことで度胸があると評されたいがために、歩み寄らない。
チキンレースが延々と続き、いたずらに時間だけが過ぎている。
　こんなことにエネルギーを費やす、メンツ優先のアメリカ政治は、どう考えても馬鹿げている。

　こんな状態が長引けば長引くほど、アメリカ経済は打撃を受ける。その打撃によるマイナスは、アメリカだけにとどまらない。経済がグローバル化している今日、その打撃は、世界経済全体に及ぶ。

　
　アメリカ政治がチキンレースを続けている対象は、新年度予算の成立の可否だけではない。
それ以上に深刻な問題がある。それは、債務上限引き上げ問題だ。

　
　危機的な財政状況下にある日本の国民として、他人のことを言えた義理ではないが、アメリカ財政も赤字たれ流しの状況であり、国債発行という借金づけの構造である。国債の元利金を償還するための財源として、また国債発行をしなければならない、そんな状態だ。

　
　政府が負う債務の上限は法律で定められており、16兆7,000億ドル(1,640兆円)の債務上限にはとっくの5月に達したのだが、それ以来、デフォルト(債務不履行)を回避するため、さまざまな緊急措置を実施し、資金のやりくりをしてきているという。

　しかし、来る10月17日には、その政府の資金が底をつく。

　そうなれば、どうなるか。政府の資金が底をつくから、歳出予算は執行不能、国債償還はストップとなる。もちろん、債務上限に達してしまっているため、新たな国債発行もできない。

　国債償還がストップすれば、国債の投売りが始まり、国債価格は暴落し、逆に金利は暴騰する。

　株価も暴落し、経済不況になる。これらが全世界に波及し、世界大恐慌が始まる。

　これが想定される最悪のシナリオであり、こんなことを招きかねないアメリカ政治は、馬鹿げている。

　債務上限引き上げ問題についても、民主党と共和党の歩み寄りが見られていない。ここでも、チキンレースが続いている。共和党は、オバマケアの延期や修正・撤廃を求めて、一歩も引かない。


　今のアメリカ政治は、世界大恐慌というリスクを冒してまで、オバマケアをめぐる二つのチキンレースをしている。

　アメリカの世界遺産「自由の女神像」は、アメリカが世界に誇る自由と民主主義のシンボルであり、それは、同時に理性と知性のシンボルのはずだ。

　今の馬鹿げたアメリカ政治の状況を見て、自由の女神像が泣いている。



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