「演歌の女王」

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人生日々挑戦

2013年10月07日ナビトモブログ記事
テーマ：人生

　今年の4月、NHKのテレビで八代亜紀さんがジャズを歌うのを観た。

　その番組は、八代亜紀さんが3月にニューヨークのジャズクラブ「バードランド」で行った単独ライブの模様を放送するとともに、彼女のアメリカにおける3日間についての密着取材をも伝えている。

　八代亜紀さんは、美空ひばりさん亡き後の日本において、演歌の女王の名を欲しいままにしている歌手だ。

　お酒はぬるめの　燗がいい
　肴はあぶった　イカでいい

　女は無口な　ひとがいい
　灯りはぼんやり　灯りゃいい

　しみじみ飲めば　しみじみと
　想い出だけが　行き過ぎる

　涙がポロリと　こぼれたら
　歌い出すのさ　舟唄を

　作詞が阿久悠さん、作曲が浜圭介さんで、八代亜紀さんが歌う「舟唄」の一節だ。

　日本語の演歌の真髄がそこにある。

　この歌を聴いて、昭和の時代に日本の経済発展を必死で支えたお父さんたちがいかに激励されたことか。

　日本酒は、ぬるめの燗だけでなく、熱燗にしたり、冷でだったり、よく飲んだものだ。
　
肴はあぶったイカもいいが、イカの塩辛だったり、ほたて貝味噌焼もいいし、よく食べもした。

　元気がいいお母ちゃんたちに発破をかけられると、女は無口なひとがいいと思ったりもした。

　昭和の時代は、日本の発展期であり、活気に満ちていたが、競争も激しかった。ドラマ「半沢直樹」に負けず劣らず、やられたらやり返すの時代でもあった。

　時には、涙がポロリとこぼれることもある。
　
　そんなときは、そんなときは、歌い出すのさ舟唄を。
　
　その演歌の女王がジャズを歌う、しかも本場ニューヨークでの挑戦だ。一体どうなるんだろう。

　NHKの番組によると、八代亜紀さんは、元々、ジャズの歌い手で、銀座のクラブなどでジャズ歌手をしていたこともあるらしい。
　そんな八代亜紀さんにとって、アメリカのジャズクラブでのステージは、50年来の夢が叶った一夜のドキュメントなのだそうだ。
　

　美空ひばりさん亡き後、演歌の女王と言えば、八代亜紀さんであるのは間違いないが、私は、実は、八代亜紀さんに負けず劣らずの演歌の女王がもう一人いると思っている。

　女王とは一人じゃないかという声が聴こえる。が、女王は一人だけとは限らない。今は、政党の代表でも共同代表というのがあるくらいだから、共同女王がいてもおかしくない。

　その人とは、ちあきなおみさん。1947年9月17日生まれだから、66歳だ。1950年8月29日生まれの八代亜紀さんより3歳年上だ。

　ちあきなおみさんの歌では、1972年に第14回日本レコード大賞を受賞した「喝采」もいいが、私は、1988年のヒット曲「紅とんぼ」が一番好きだ。

　空にしてって酒も肴も
　今日でおしまい　店仕舞い

五年ありがとう　楽しかったわ
　いろいろお世話になりました　

　しんみりしないでよケンさん
　
　新宿駅裏　紅とんぼ
　想いだしてね　時々は
　
　ちあきなおみさんは、1992年にご主人との死別をきっかけに、一切の芸能活動を休止し、私たちの前から姿を消している。そうか、もう20年以上も経つのか。

　八代亜紀さんが歌う「舟唄」を聴きながら一杯やるとき、必ずちあきなおみさんの「紅とんぼ」も歌ってしまう。

　ちあきなおみさんは、「新宿駅裏　紅とんぼ　想いだしてね　時々は」って言っているけれど、私は、「ケンさん」の気持ちで毎日のように想いだしているよ。

　八代亜紀さんとちあきなおみさん、二人の演歌の女王。人生で、もう一回、この二人の女王の競演を観てみたい。

　NHKのテレビ番組「演歌の女王　ジャズを歌う～八代亜紀・ニューヨークでの挑戦～」を観て、強く印象に残ったことがある。

　ニューヨークで八代亜紀さんが組んだジャズアーティストのチームは、当代の世界一流チームだ。彼らが十数曲のジャズナンバーをチームと共にこなす八代亜紀さんを絶賛し、提案した。
　
　それは、ステージの締めは、「舟唄」にしよう、しかも日本語のままで歌って欲しいというのだ。
　エッ、戸惑いを見せる八代亜紀さん。
　チームリーダーが言う。「大丈夫。オーケー、オーケー」

　そして、驚くことに、彼らは、譜面を見ながら、たった一回で「舟唄」を完璧に演奏して見せたのだ。

　50年来の夢が叶ったステージは、最後の「舟唄」で幕を下ろした。
　「舟唄」は、八代亜紀さんが日本語のままで歌った。
　
　歌い終わった瞬間、万雷の拍手だ。

　ニューヨークの目が肥え、耳が肥えたアメリカ人、日本語が分からないアメリカ人たちが口々に言う。
　「八代亜紀のジャズは素晴らしい。感動した。とりわけ、日本語で歌った『舟唄』には、鳥肌が立った。日本語が分からなくても、分かった。本当にありがとう」

　歌って、いい。実にいいなあ。

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