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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百七十) 

2023年06月29日 外部ブログ記事
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「心配って、おかしいじゃないの! そんなに心配しているのなら、それこそ早く帰って来るべきでしょうが。そうよ、武蔵は案外に冷たいのよね。千勢もそう思うでしょ!」「いえ、そんなことは……」決してここで、同調しない千勢だ。武蔵を非難することばは、小夜子以外が口にすることはタブーだ。ひと言でも武蔵をとがめようものなら、烈火のごとくに怒りだす小夜子だ。「武蔵の悪口を言っていいのは、あたしだけなの!」これが、常套句だ。
「旦那さまはおやさしいお方ですから。奥さまがおつかれのごようすなのをごぞんじで『起こしちゃいかんぞ。』と、おっしゃられたので」と、あくまでよき夫であると強調した。とたんに、小夜子のけわしい表情がゆるんだ。パッと、明るくなった。「そうなの、そうなのよね。それが、武蔵なのよ。あたしが、先ず一番なのよね。ふふ……」
 本音をいえば、心地よいのだ。崇められることに快感を感じている。女学校時代が思い出される。校門をはいるおりには、「おはよう!」と、教師たちからいっせいに声がかかる。同じく登校中の同級生やら上級生たちへかけられる声とは、あきらかにがトーンがちがう。すこし鼻にかかったようで、動揺している様が聞きとれる。並んで校門をとおることに、他の者にたいする優越感のようなものを感じとられる。その日いちにちが高揚感につつまれるように思えるのだ。「小夜子さまとご一緒に門をとおったの」。「えぇっ! あたくしも少し早かったみたいだから、あすはお待ちしようかしら」。「だったら早くきますわ、わたくしは」。そんな会話が交わされていることに満足感をおぼえる小夜子だった。
「女房を広告塔に使う、なさけない経営者だ」。そんな声が、競合先から聞こえてくる。現在の状態が正常ではないことは、武蔵も実感している。小夜子を正規の社員としてしまえば、批難の声を抑えることはできるかもしれない。しかしそれでは、経営者としての武蔵の矜持に反する。あくまで、一時的な変則の事態として考えている。ホップはできた。いまはステップの段階だととらえている。そしていつかはジャンプをして、会社名のごとくに、日本一の会社をめざしたいのだ。ただ、なにをもって日本一とするかが、武蔵の中にまだできあがっていない。

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