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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第三部〜 (四百六) 

2024年01月16日 外部ブログ記事
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 しかし記者発表の場では、女を寝取られたことによる意趣返しの犯行だとされた。仕事関係のトラブルについては一切報道されず、世間的には愛憎問題として報じられた。さほどに盛り上がることもなくすむかと思われたが、業界新聞によって事の真相が暴露された。富士商会によって倒産させられた大杉商店の長女・次女が、ある金主の妾になることにより資金提供を受けて日本商会を立ち上げた。
 あくまで富士商会をターゲットにした商売だったが、それが失敗に終わり金主からの返済を求められた末の、苦肉の報復だったことが報じられた。あまりに詳細なその情報から、日の本商会からのリークだし断じられて、物笑いの種となった。一時期において動揺の走った取引先も、「御手洗社長のやりそうなことだ」として、一般紙の話を口にして騒動がおさまった。結局のところ、富士商会の存在感があらためて示されたことになり、武蔵の病状の行方に関心がうつった。
 なんとか危機を脱した武蔵には、最上階にあるVIP専用部屋が用意されてあった。小夜子が出産時に入院した病院で、武蔵の心付けがたっぷりと配られた病院だ。当然の待遇として、身元が判明してすぐに用意された。30坪はあろうかという広々とした部屋で、壁ぎわにベッドがおかれ、病人からも窓の外がみられる。窓がおおきく晴れた日には富士のお山がみえるという自慢の個室だった。
見舞客用にと3人がけのソファがおかれていて、小さなガラス製のテーブルが付随している。その対面にはひとり用が2脚用意されている。ある程度の回復後には、そこで病人と見舞客が談笑できる。ある意味、秘密の会合にはもってこいの部屋だった。そして小夜子の仮眠用にと簡易ベッドの申し出があったが、さすがにそれは辞退した。ソファにでも横になりますからと告げたのだが、自宅においてきた武士のことが気になる小夜子だった。
千勢が面倒をみているのだが、どうにもお乳がはって痛みがでる。「あたしを呼んでいるのよ」。「あたしを恋しがっているんだわ」。そう告げて、一旦自宅にもどることにした。正直のところ病院側としても、小夜子のわがままぶりは出産時のことで十二分にわかっている。わたりにふねとばかりに、「しっかりと看させていただきます」とにこやかに送りだした。苦笑いする竹田にたいし、頼んだわよと念を押して病院をあとにした。
1週間ほどしても武蔵の意識がもどらず、さすがに医師連もあわてだした。計器やら検査においては異常はみつからなかった。ただ、心音が若干弱いことが気になることだった。肝臓の数値が異常を示しているが、これは前々からのことで、「すこし酒をひかえてください」と口酸っぱくいっていることだった。武蔵みずからの意思で昏睡状態にあるのでは、などと言いだす若手もいた。点滴でもって術後の感染症をおさえ、輸液での栄養補充をとるしかなかった。床ずれを起こさないようにと、短時間のうちに体勢をかえることもはじめた。「どうしてなの」。「いつ目ざめるの」。医師をみるたびに小夜子が問う。「もう少しおまちください」としか返答のできぬ医師にしびれを切らした小夜子が、竹田にとんでもないことを言い出した。

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