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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百九十三) 

2022年12月06日 外部ブログ記事
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「勝子、勝利! 小夜子さまを、ほら、ご案内して。そんな玄関でなにしてるの、失礼でしょ」 中から、声がする。二階建ての家で、土かべが所々はげかかっていたりしている。玄関のガラス戸もガタガタと音を立てなければ開かない。「古い家でして」。申し訳なさそうに竹田が言う。「掃除は毎日してくれているのですけ……」と、付け足した。「なに言ってるの!」。奥から母親であるタキの声が飛んできた。「お金が取りもどせたんですよ、専務さんのご尽力で」と、五平に対する感謝の言葉口をついたところで、あわてて「母さん! 社長の指示だと言ったろうが。社長のおかげだって」と、荒い声をかぶせた。「いいのよ、竹田。分かってるから。こういったことは、専務のお家芸でしょうから。お母さんにそんな言い方をだめでしょう!」と、語気鋭く言った。
 場の雰囲気を変えるべく、勝子が「はーい!」と明るく返事をして、小夜子の手を握ったまま上がらせた。「ここ、少しささくれてるから、気をつけてね」と、上がり口を指さした。「勝利、こんどのお休みには直してよ。あんたは、何度も言わないとやらないから」「わかったよ、いそいでやるから」。「それから、物干し台のがたつきのひと、忘れてないでしょうね」とつづき、「茶の間の桟にたながほしいんだけど」と、際限なくでる。「そんなに? 一度にはできないから、少し待ってくれよ。人使いが荒いのは、社長以上だよ」「あんたは、ほんと、要領がわるいんだから」 互いを責め合うことばが、ポンポンと飛び出してくる。しかし、そんなふたりの会話がうらやましく思える小夜子だった。
「でも、思い切ったわね。まさか、勝利が、一国一城の主になるなんてねえ」 小夜子の手をしっかりと握りながら、「ここが勝利の部屋なの。そしてここがお茶の間で、奥がお台所なの。あたしのお部屋もあるのよ、二階に、ね。あとで行きましょ」と、説明しながら廊下を進んだ。「ね、ね、見て、見て。ちっちゃいけれど、お庭もあるの。いまはまだなにもないけど、お花をね、植えるつもりなの。そうねえ、春には菜の花と、やっぱり桜よね。夏は、ひまわりでしょ。それに、朝顔よね。秋はね、とうぜんに秋桜。それと、菊の花よね。大っきいのじゃなくて、小菊が好きなの。ただね、冬が……。でも、いいの。お庭の土も、少しは休ませないと。一年中お花が咲いてるのもすてきだけど、疲れちゃうでしょうしね。もちろん、そのときどきで、植える場所は変えるつもりなんだけど。ねえ、その方がいいんでしょ?」
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