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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百九十四) 

2022年12月07日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 まるで、夢見る少女だった。“目がキラキラしてるわ”と、まぶしく思える小夜子だった。ほほにも赤みがさして、さながら少女漫画に登場してくるお嬢さま然としていた。片時も離れたくないと、握った手を離そうともしない勝子だが、小夜子には自分と会ったことでムリをしているのではないかと不安になってくる。“さっきより熱くなってる気がするわ”。“こんなことなら来るんじゃなかった”。“病院に確認してからの方がよかった”。そんな思いが小夜子にわいてくる。「お茶、持ってくるわね」と、いそいそと勝子が離れた隙に「竹田。ほんとのところは、どうなの? ほんとに快方に向かってらっしゃるの?」と、声をひそめて問いただした。「は? はい、もちろんですけど。どうしてですか?」 怪訝そうな顔つきで小夜子の真意をはかりかねるといった風に、竹田が逆に問い返した。「なら、いいけど。確認しただけよ。お元気すぎるから、ちょっとね。驚いちゃってね」“おかしいわ、おかしい。あんなどか身なのに。なんとも思わないの? それとも、竹田には知らされていないとか。有りうるわね、母親だけに告げてるとか”
 どうしても腑に落ちない小夜子だが、その時ふと千勢の言葉が思い出された。「小夜子奥さまご自身の体温、ご存知ですか? 平熱とか言うらしいのですけれど。大事なことですから、これって。先のお屋敷で、ちょっとした騒ぎがありまして。あたしも気にするようになったんですけど」「なあに、どんなこと?」「はい。ご主人さまが出社される直前に、奥さまがお倒れになられまして。前夜のお熱は七度ちょっとで、微熱だと思われていたのですけど。であわててお医者に診ていただかれたのですけど、肺炎一歩手前だとのご診断がでました」「でも、そんな微熱なのに?」「はい、それがくせものでございました。実はその奥さま。平熱が何とまあ35度でございました。ですので、37度を越えますと、ほんとうは大変な高熱だったのでございます。ですから、平熱がたいせつなのだといわれました」
「そうなの、そんなことが。怖いわねえ、ほんとに。千勢は、どうなの? 調べたの?」「あたしですか? あたしは、6度5分の標準でございました。でも小夜子奥さまは、きっと低いのじゃないかと思いますよ。そうだ、はかっておきませんか? お風呂上りではいけないので、しばらく間を置いてからでも。それから、明日の朝におはかりになってください。そうすれば、よりせいかくな平熱がでますから」 そんな経緯から、小夜子もまたほぼ35度という低い平熱と分かった。“あたしが低いから、そう感じるのかしら? ううん、違うわよ。あの感じは、絶対に熱があるはず。微熱かもしれないけれど、見過ごして良いものじゃないわ。興奮しての体温上昇ならいいけれど。悪い兆候でなければいいけれど” そう思って勝子を見ると、確かに顔が赤みがかっている。元々青白い顔の勝子に、ほんのり赤みがさしている。健常なら喜ばしいことでも、勝子には悪い兆候に見えてならない。

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