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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百九十一) 

2022年12月02日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 前夜まで降り続いていた雨も上がり、ぬかるんでいた道もほぼ乾いた。そこかしこにある小さな水たまりに車輪が入ると、水しぶきが上がる。突き抜けるような青空が、一気にゆがんでしまった。「キャッ!」。「うわっ!」。そんな奇声が上がるたびに、「すみません」と小声で呟き、頭を下げる竹田だ。が、当の相手には聞こえるはずも、竹田が頭を軽く下げる様も見えるはずもない。「仕方ないじゃない、道が悪いんだから。そんなことで一々頭を下げることなんか、ないでしょ!」“心根の優しい竹田らしいわね”と心内では思いつつも、口から出る言葉は辛辣だった。
「はい、申し訳ありません」と、小夜子にも頭を下げる竹田だ。「米つきバッタじゃあるまいし、男がそんなに頭を下げないで! もっと毅然としなさい!」と、またなじる小夜子だ。「申し訳ありません、性分なものですから」「竹田、あなたね……、いいわ、もう。あたしが何か言うと、決まって『申し訳ありません』だものね。でも、やめて。あたしが、いつも怒っているみたいで、不愉快になるのよ。きょうはお姉さんにお会いできる嬉しい日なんだから。いいわね」「申し訳、、、いえ、はい、分かりました。とに角姉も大喜びでして、雨が降っているのに傘もささずに飛びだしてしまう始末で。母もまた、前々日から料理の下ごしらえに念が入りまして。手間ヒマをかけるほどに料理は美味しくなるから、なんて言いまして、はい」
「とにかくね、お母さんやお姉さんの前では、決してあやまらないでちょうだい。もっともおふたの前では、竹田と口を聞くこともないでしょうけどね。竹田、あなたに言いたいことがあるの。あなたの話って、何ていうか、キリというものがないの。何々して、何々してってね、文が終わらないのよ。だからね、聞いている方は気が休まらないの。分かる? まだ何か大事な言葉がでてくるのか? って、身構えながら聞いてなくちゃいけないから」「申し訳、、、あ、いえ、その……。小夜子奥さまの前だと、どうにも、その、うまくお話ができないというか、その……」 しどろもどろになってしまう竹田だが、武蔵の伴侶というだけでは片付けられない感情を抱いてることに、本人自身が気付いていなかった。
「ああ、でも楽しみだわ。お母さんのお料理も食べてみたいけれど、何といってもお元気になられたお姉さんよ。早くお会いしたいわ。正直、あのまま逝かれてしまうのかって心配だったけれど、持ち直されたのねえ。ほんとに良かったわ」「はい、小夜子奥さまのおかげでして。もう言葉もありませんが、家中みな、ほんとに感謝の言葉をならべておりまして。でも小夜子奥さま、お疲れじゃありませんか? お帰りになられたその日に、あんなどんちゃん騒ぎになってしまいまして。その翌日にまた、こうしてお越しいただこうとしまして。ほんとに、申し……あ、言いません。もう言いません。もう、口を開きません」 キッと睨み付ける小夜子をバックミラーに見た竹田。慌てて口を閉じた。

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