どうでも雑記

石部の棚田 Y 「冬の棚田」 

2022年10月14日 ナビトモブログ記事
テーマ:伊豆の生活

日本は75%が山地と丘陵地、どちらかといったら稲作に不向きな土地です。従って平地の少ない日本では「棚田」と呼ばれる山地や丘陵地の斜面に水田を作り,稲作を行う努力が続けられてきました。

四季があり、降水量が多く安定していることから、灌漑(かんがい)設備が無くても稲の栽培に必要な水を確保することができたのも棚田が作られた要因の一つだと思います。

生きるために食べる、食べるためには作る。作るためには作る場所を作ることから始まる。
身近なところに水源があり、日当りの良い山の斜面が石部にもあり、先人は山林を開拓した。
斜面に大小の石を使って石垣を積み平らな部分を作る。棚田に引水をするために石組をして水路を作る。

山を見渡しても大石はない、この膨大な量の大石はどこから、どうやって運んできたのだろう。そしてどうやって積み上げたのか。
明治時代に権力もない弱者の百姓たちが、牛を使ったにしても偉業だ。集落総出で何年、何十年もかけて作られたのだろう。

米作りをした棚田をしばらく眺めていると、先人たちの様子が見えてくる。当時の人達は大変な苦労を重ねて努力をした。
それは後世までの大事業を成し遂げたこと、そして食の不安がなくなり、自給自足で生きられる幸せな時代を過ごしたことでしょう。

ところが夢にも思っていなかったこと、自分たちではどうにもならないこと、そんな時代がやってきた。

世界的な経済の自由化、グローバル化が農業に大きな影響を与えた。日本の農業は個人農家の問題だけではなく、むしろ国の政策とか農協の機能役割、そして構造的な問題があったと思うところが多い。

そんな農業環境の変化と経済発展に、ついて行けなくなったのが棚田農業でした。更に少子高齢化が追い打ちとなり致命傷となってしまった。

一時期、原野化してしまった石部の棚田だったが、何百年も前に先人の苦労と努力で作り上げた、この美しい棚田の風情を残すために、地権者と行政や観光協会などを含めた「棚田保全推進委員会」が発足した。

棚田保全と地域づくりに賛同する人達が、広範囲からボランティアとして集い、棚田オーナー制度もつくり活動の推進を図ってきた。
Kenはこの棚田を借りて自分で稲作を行う、オーナー制度に参加していた。

季節外れの眠るような冬枯れの静かな棚田と駿河湾を眺めながら、途中で買ってきたコンビニ弁当を食べるのが楽しみでした。

棚田を流れる水の音、田んぼで育ったヤゴがトンボになって棚田を飛び回る。田んぼの中を泳ぎ回っていたオタマジャクシがカエルになって大合唱だった。
虫が鳴き蝶や蛍も飛交う。水音が絶えなかった棚田も役目が終わって水が止まる。

棚田は眠りに入ったように静かだ、棚田で過ごした彼らは、卵かサナギになるか、それとも地に潜って冬眠に入る。

やがて地熱を感じ、春の田お越しで賑やかな人の声で起こされる。そのときまで棚田と一緒に長い眠りに入る。(完)


こうやって棚田を眺めていると、いろいろなことが頭の中でぐるぐると回るのです。
その中の一部を思い出しながらシリーズで書いてみました。
訪問頂きましたことを感謝しながら,お礼といたします。ありがとうございます。



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カサブランカさんへ、

素浪人kenさん

奇麗なミネラル水と太陽に寒暖差という恵まれた自然環境なら美味しい米ができますが、営利としてみると成り立ちません。

お話のように飛行機で種まきや肥料・消毒の散布をする、グローバル経済社会の中で日本の農業は競争力はありません。従って独自の農業技術が必要で国の施策が求められます。

それとは別に棚田は営利ではなく、生きた食の歴史文化として伝承できるので大切にしていきたいと思います。

2022/10/15 18:25:00

自給自足でも

カサブランカさん

土地のない国の知恵ですね。棚田の美しい緑と並々と続く水の風景はたずさわった事のない者にはただ美しいのです。
私には想像もできないほどの長い地道な努力と労力で作られるお米。
この現在の社会状況からますます生産者に感謝ですね
此方は広大な赤土に灌漑を施し強大な農業用の機械で農作業。

2022/10/15 14:22:05

喜美さんへ、

素浪人kenさん

今、住まわれているところは結婚されて現在まで住まわれているところですか…。

だとすると、周辺は高度経済成長期に大開発されて住宅地になったようなところと推察します。

都会に近いところは何処もそんなところが多いですね、伊豆はご承知のように、逆にバブルが弾けて寂しくなりました。
唯一の観光業も政府の高速道路計画中止しで、また陸の孤島に逆戻りです。良いのか悪いのか複雑な気持ちです。

西伊豆を撤退して4年が経ちます、それでも漁師友がいますので、時々伊豆の海を眺めに行きます。機会がありましたらお話しできればと思います。

2022/10/15 11:57:35

ふじ子さんへ、

素浪人kenさん

ふじ子さんは自然をテーマにした動画も作られていますが、自然はいいですよね。

人間は自然界の一部を借りて生存しています。間借り人だから、自然を壊さないようにしなければいけないと思います。
自然界の全ては共生・共存の世界です。人間が100%を求めると、そのバランスが崩れて何かが起きます。

小さなことだが棚田で稲作を通して自然や生き物たちと闘ったり助けたり、いろいろやりながら米ができます。
地域の先輩たちの体験談の中にはたくさん感動する話があり、得るものが大きかったです。

動画作り期待しています。ありがとうございます。

2022/10/15 11:34:58

色々

喜美さん

何回も読ませていただき昔のこと思い出しました
此処は田んぼは なかつたですけれど私は結婚したときはお山のお姉さんと呼ばれていました
今は上に大きな団地が出来たりして我が家も上から車が入る様にしましたから便利になりました
1回お会いして伊豆の事から色々お話したいです

2022/10/15 10:30:02

ありがとうございます。

しずおかふじ子さん

ただ、キレイと眺めていただけでしたが
そういった先人の努力と受け継ぐ人々が
丁寧に手をかけ生き物たちと共生しながら
後世に引き継がれていくのですね。
すてきな思い出シリーズを話してくださって
ありがとうございました。感謝合掌

2022/10/15 05:08:04

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