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敏洋’s 昭和の恋物語り
ボク、みつけたよ! (十一)
2021年10月30日
テーマ:テーマ無し
入院時は、正直のところ「どうでもいいや」といった自暴自棄な気持ちでしたねえ。
離婚してまだ半年も経っていない、確か五十三歳だったと思います。
娘が高一のときだった筈ですから。
でその部屋に、わたしに遅れること二日後でしたか、視覚・聴覚障害者の入院がありました。
大変でしたよ、それが。
気の毒だとは思うのですが、とにかく大声を発せられるわけです。
病室って静かでしょ? テレビにしてもイヤホン使用ですからねえ。
会話にしても他人に聞こえないようにと小声じゃないですか。
家族の方は手の平に文字を書いての会話をされているのですが、その返事が大声になってしまうのです。
ご当人はその認識がないらしくーまあねえ、聞こえが悪いのですからそれも当然と言えば当然なことですが。
すぐさま家族の方が大声を出さないようにと手の平に書き込まれるのですが、中々に。
それが四六時中ですから、閉口します。お一人になられると大変です。
ご当人は昼夜の区別が付かれない状態ですしね。
悪気はないのでしょうが、こちらはたまったものじゃありません。
お見舞い客の中に幼稚園児だと思われる子どもさんが見えましてね、そのあまりの大声にびっくりして泣き出したというわけです。
それで長期入院されているこの部屋の主のような方が我々の代表として、その方の個室への移動を病院側に申し入れされました。
すったもんだがありましたが、個室へ移られました。
泣き出したと言えば、名古屋の東山動物園でのことです。
息子と出かけたのですが、えっと、三歳だったかな? 娘が生まれた年のお盆休みだったと思いますが。
わんぱく盛りのはずなのですが、電車で移動中に、わたしの顔をじっと見ているのです。
「窓の外を見てごらん」と何度も言うのですが、そのたびにちらりと視線を動かすだけで、すぐにまたわたしを見るんです。
そのたびに、にっこりと笑顔を渡してやるのですが。
外の景色に見とれていたら、わたしがどこかに行ってしまうのではなんて、そんな思いにでも囚われていたのでしょうか。
仕事仕事に追われて、あまり相手をしてやりませんでしたからねえ。
ほんと、可哀相なことをしてしまいました。
話を戻しましょう。
人には向き不向きというものがあると思うのですが、他人からの指図が大嫌いなわたしのくせに、自ら予定を立てることができないーいや下手なわたしです。
そもそも予定を組むのは好きなんです、色々思い描きながら行程を組むのは楽しいです。
ただ、その予定というか時刻設定がだめなんです。
決して無理な設定ではないんですよ。
例えば高速道路を走る場合でも速度は七十キロで計算しますし、二時間弱おきでの休憩を入れますし。
それでも目的地の到着時刻が遅くなっちゃうのです。
まあわたしとのお付き合いが長いお方なら、お分かりだと思うのですけれど。
そんな簡単に頷かないで下さいな、せめて「そうだっけ?」と一度は首を傾げて下さいな。
わたしとあなたの仲じゃないですか。
「お前とは初だ」と仰います? 出会いというものには、必ずに“初めて”ということがあるじゃないですか。
それにですね、ここまでお読み頂いたんですよ。
だったら、あなたとわたしの仲ですよ、もう。
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