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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百五十四) 

2021年10月28日 外部ブログ記事
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 村の寄り合い所に集まった村人たちが、口々に噂話で日々の憂さを晴らしにかかっていた。
「しかし竹田の本家も情けない」
「そうよ、そうよ。畑を借りて耕しとるとか」
「それとも借金のかたに取り上げたのかいの」
「それがて、借りてた金を利子を付けて返したそうな」
「そりゃまた豪気なことよ、利子を付けてかいな。あやかりたいものよ」
「ほんに、ほんに」
 本音が出たところに、息せき切って佐伯本家の当主である正左ヱ門がかけこんできた。

「遅うなって」
「なんの。それじゃ、始めようかの」
「茂作が、まだじゃが」
「構わんさ。いっつも来んから、声なんぞかけてへんわ」
「ま、いい。今夜は良い話での。うちの正三の縁談が決まったのよ」
「ほんまですかいな、それは」
「ほんに、おめでたいことで」
 そこかしこで祝いの言葉が飛び交った。佐伯本家からの差し入れだと、酒が振舞われている。
ちびりちびりと口を付けていたが、祝いの酒と聞き皆安心をした。

「茂作の奴が知ったら……。あいつのこっちゃて、難くせを付けるんじゃないかの」
「しかし佐伯さまのご本家じゃし。いくら何でも、それは」
「ほうじゃがのお」
「ところでご本家さん。少しばかり気になることがあるんですがの?」
 世話役と話し込んでいた正左ヱ門が、顔を向ける。
「跡取りさまはどうされるんで? わしらも、ちょいと気になります」

「そうよ、そうよ。官吏さまになられるということは、もうこちらには戻られないので?」
「いやいや、ご心配をおかけしとりますなあ。跡取りは、正三です。
官吏を退職した後に、戻ってきます。それまでは、わしが頑張るちゅうことですわ。
まだわしも、五十と一ですからのう。そうそう早く隠居とは考えておりません。
まあ万が一のことがあったら、正三までの繋ぎとして誰ぞを、と思ってはおりますが」

「正三さまは、お戻りになられるんで?」
「ほうですか、ほうですか。それならわしらも安心ですわ」
「正一坊ちゃまが、ご戦死なさらねば、のお」
「それは言うちゃならんことぞ。お国の為に散らされたお命じや。今は、靖国の御社におられるじゃ」
「そうそう。お国をお救いくださったんじゃてのう」
 次男の正二のことは誰も口にしなかったが、つなぎ役が正二かと辟易した気持ちにさせられた。
まだ16だというのに隣町の娘を孕ませてしまい、「勘当だ!」と追い出された放蕩息子だった。
子どもが出来てからは心を入れ替えて真面目にやっているという風の噂が流れてきたが、
「どうせ佐伯家の作り話さ」と本気にする者は居なかった。

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