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空席 

2018年08月17日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

今、国立演芸場では、七月二日に八十一歳で亡くなった、桂歌丸の追悼公演をやっている。
毎年、歌丸師がトリを勤めた八月中席は、連日の満員御礼だった。
今年も、千穐楽までチケットは完売である。
今回、十四日と十六日のチケットを購入した。
ところが、十四日は従姉の告別式で、行けなくなった。
この日は、歌丸師の誕生日でもある。
偶々、シルバー料金で追加購入していたから、金銭的な損失は少なかった。
それより、急なことで、友人に譲ることも出来ず、チケットが無駄になったことは悔やまれる。
最前列中央が空席とは、チケットを買えなかった人や、出演者に申し訳ない。

二階ロビーには、歌丸師の写真や所縁の品が飾られ、記帳台も用意されていた。
筆ペンで書かれた見事な署名を見て、悪筆の私は書くのを憚れた。
記帳台の前に、歌丸師が国立演芸場八月中席に出演した記録が掲示してあった。
それによると、昭和五十七年から毎年出演したのである。
平成六年からは、師匠のライフワークである、三遊亭圓朝作品を高座にかけて来た。
私は、『怪談乳房榎』、『江島屋怪談』、『お露新三郎出逢い』など、最近の三作しか見ていない。
実演に関しては、まだまだ、掛出し者だ。
勿論、子供の頃から、ラジオや本で落語に親しんで来た。
先日、鳳楽師も、「落語は生に限りますね」と、云っていた。
全くその通りだが、現役時代の私は、寄席に通える状況ではなかった。

追悼公演の気分を、ロビーで存分に味わってから、場内へ入った。
やはり、満員御礼の日だと場内に活気がある。
先日、中学生の団体が入った日の騒つきとは、雰囲気が異なる。
定刻、開演になり、それぞれの出演者が、歌丸師に関わるエピソードを披露した。
目新しいものが少なかったのは、最近、色々なテレビ局が放映したのを、見ていたからだろう。
追悼公演という意味では、多少、期待外れだったが、どの出演者も気合が入った高座で、大いに楽しめた。
特に印象に残ったのは、成長著しい小痴楽、独自の芸風の遊雀、人気者の歌春、毎回大入袋の束を披露する小南、円熟近い小遊三などである。
ところで、私の左隣は、最後まで空席のままであった。
十四日に代わりを見付けられなかった、私の不手際をチクリチクリと責められているような気がした。

   *****

写真
8月16日(木)の国立演芸場の玄関と記帳台



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