メニュー

最新の記事

一覧を見る>>

テーマ

カレンダー

月別

吾喰楽家の食卓

涙なみだ 

2016年12月18日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

昨日、国立演芸場の中席で、さん喬師匠が高座に上げたのは、『笠碁』でも『芝浜』でもなかった。
『幾代餅』である。
これも、好きな人情噺だから、文句はない。
彼が昨年の八月上席で、この噺を口演したのを、聴いている。

『幾代餅』は『紺屋高尾』と似た噺である。
男の職業と花魁の名前は違うが、テーマは同じだ。
男の純愛に心を動かされた花魁が、年季明けに嫁いで来る。
江戸落語と上方落語で、地名や人名を替えることはあるが、『幾代餅』のような例は珍しい。
同じ噺家が、両方を口演することはないようだ。
柳家と古今亭が『幾代餅』、三遊亭と立川流が『紺屋高尾』を遣る。

錦絵の幾代太夫を見て一目惚れした搗き米屋の職人が、会いたい一心で一生懸命に働き、一年で十五両の金を用意し、高嶺の花の花魁に会うことができる。
翌朝、「次は何時?」との太夫の言葉に、男は「一年後」と答える。
身分を偽っているから、太夫に不思議に思われ、男は正直に経緯を話す破目になる。
この辺りの二人のやり取りが、この噺のクライマックスだ。

左隣の和服のご婦人が、ハンカチで目頭を押さえ始めた。
私は、目頭は熱くなっているが、まだハンカチは必要なかった。
その内、彼女は鼻をすすり始めた。
当方も、ハンカチが必要になった。
さん喬師匠は、淡々と噺を続けていた。
多くの人を泣かせるのだから、その話芸たるや凄いと云うしかない。
割れんばかりの拍手の中、幕は下りた。

噺の余韻に浸りながら、西銀座まで、お堀端を歩いて西銀座へ向かった。
半蔵門、三宅坂、桜田門、祝田橋と、時代小説に出て来る地名ばかりた。
この後、鳳楽師匠に泣かせて貰うことになる。

   *****

写真
12月17日(土)の昼餉と中席の演題



拍手する


コメントをするにはログインが必要です

PR





上部へ