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吾喰楽家の食卓

淀五郎の悟り 

2016年11月21日 ナビトモブログ記事
テーマ:古典芸能

『淀五郎』は、実話を元に作られた古典落語である。
森田座の公演『仮名手本忠臣蔵』で、座頭の市川団蔵は由良之助と師直を演じる。
ところが、塩冶判官役の役者は急病になる。
団蔵は、代役に相中の澤村淀五郎を推薦する。
大役を相中にさせるわけには行かないので、淀五郎は名題に抜擢される。
落語でいうと、前座が真打に昇進するようなものだ。
ところが、その演技が酷く、切腹の場面で、団蔵は淀五郎の側へ行かない。
中村仲蔵の助言で、ようやく、まともな芝居になり、噺は終る。

山口瞳は、自身の著作『旦那の意見』で、『淀五郎』を扱っている。
志ん生のテープを聴いての感想である。
圓生のものと微妙に違っていて、その差が面白いらしい。
旦那とは仲蔵のことで、意見は「思う所を述べて人を諌める」という意味で使っている。
本の中で、「仲蔵が淀五郎に意見するところが絶品である」と、称賛している。
仲蔵は人払いをし、酒の仕度をさせ、団蔵への恩義、芸の型、心構え、具体的な演技などを諭す。
団蔵も基本的な考えは同じであるが、意見に仲蔵のような具体性がない。

宴席に移り、鳳楽師匠は、いつものようにグラスを片手に客席を回ってくれた。
「おや、この前の・・」
先月の長話を、覚えていてくれた。
「今日の『淀五郎』を楽しみにしていました」
「この噺は長いので、中々、遣る機会がなくて・・」
何だか、今回の出来に、満足していないような口ぶりである。
「良かったですよ。先月、国立劇場で四段目を観たばかりなので、尚更、楽しめました」
「有り難う御座います」
「二回も観たんです。私は歌舞伎の初心者なので、一回では解らないのです」
「二度も観られて、いいですね」
「こちらの〇〇さんが、私の歌舞伎の先生です」
同行のパトさんに振ったが、シャイな先生で、話は長く続かなかった。
ところが、お客さん同士の会話は、毎回、私以上に盛り上がっている。
この差は何か、よく分からないが、お互い『銀座風流寄席』を、大いに楽しんでいる。

   *****

写真
11月19日(土)、『銀座風流寄席』のご馳走(勘八と青柳の刺身・炙り飛龍頭)



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