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吾喰楽家の食卓

【無い物ねだり】と【隣の芝は青い】 

2016年11月17日 ナビトモブログ記事
テーマ:生活

昨日の朝、中学時代からの同級生から電話があった。
彼は、東京の練馬で、食品加工の会社を経営している。
大学時代に父親を亡くし、家業と学業の二足の草鞋を履いた。
それでも、留年することなく卒業した。
ある種の苦学生である。
わが家の近くに、彼の会社の倉庫がある。
一昨日、「明日の朝、8時頃に仕事が終わるので会いたい」と、電話があった。
早い時間なので不思議に思ったが、会えば事情が判ると思い、何も訊かずに承知した。
彼は、大型トラックで来ているから、わが家に来たくても車が入れない。
だから、会うときは、いつもこちらから出向いている。

仕事を終えた彼は、倉庫の事務所でお茶を飲んでいた。
「今、朝飯が済んだところ」
「デザートだよ」と、朝餉がまだかもと思い、家から持って来たバナナを渡した。
「一本、頂くよ」と、好物らしく、直ぐに食べ始めた。
「何時に来たの?」
「三時」
「随分、早いね」
「コンテナが着いたんだ。中国からの生姜」
「台湾じゃないの?」
「台湾人だけど、彼ら、今は中国で作っているんだ」
「何で?」
「彼らの住んでいる地域は、開発が進み、今は生姜を作っていない。畑を金に換え、中国に渡って遣っているんだ」

「ところで、奥さんは変わりない?」
十数年前、彼の奥さんは脳梗塞を発症して、現在、リハビリ中だと聞いている。
「相変わらずだよ」
「それは、良かった」
「でも、大変。介護施設の費用を捻出する為に、働いているようなもんだ」
彼は、私の年金を、はるかに超える額を云った。
「偉いよ。俺に払える額ではない」
「昨日、女房の所へ面会に行ったんだ。『何処か、行きたい所あったら、連れて行くよ』って訊いた」
「そしたら?」
「『何処へも行きたくない。早く天国へ行きたい』だってよ。涙が出た」
「・・・」

その後、お互いの近況や同級生のことなど、情報を交換した。
想像した通りだが、具体的な用事はなく、お喋りをしたくて呼ばれただけだった。
勿論、それはそれで良い。
彼は、私の“悠々自適な一人暮らし”が、羨ましいと云う。
私は、体は不自由とはいえ、“連れ合いの存在”が、羨ましい。
お互い、【無い物ねだり】かもしれない。
否、私は連れ合いを欲しいとは、思っていない。
彼だって、妻の存在を疎ましいとは、思っていないはずだ。
ねだっていないのだから、【隣の芝は青い】が、正確なのだろう。
結局、与えられた環境の中で、精一杯、それぞれの道を生きるしかないのである。

   *****

写真
11月16日(水)の昼餉と夕餉



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喜美さんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

私の両親は、二人とも長命でした。
父は自宅で具合が悪くなり、病院へ行く途中で亡くなりました。
母は自宅療養でした。
家族、介護士、医者に看取られ、静かに他界しました。

妻は入院中の病院で亡くなりました。
その時の情景は、目に焼き付いています。
食事が食べられなくなったのは、晩年の二三日だけです。
静かな最期だったと思います。

2016/11/17 09:11:24

大変ですね

喜美さん

私はそのお思い全くしませんでした両親は4〜5日寝ましたけれど静かに家で亡くなり
主人は皆に言われます奥様孝行だと。
昼から寝ておやつだから呼びに行きましたら
こっち向きましたけれどまた寝てしまい直ぐ救急車で病院に 其のまま4時に亡くなりました 今でも其方の部屋にいるみたいです

2016/11/17 09:00:19

パトラッシュさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

功徳とは意識しませんでしたが、話を聞く余裕はありました。
本当は、二人で酒でも飲めば良いのですが、下戸なんですよ。

2016/11/17 07:38:12

彩々さんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

確かに「生き方」は選べますが、「死に方」は神のみぞ知るですね。
結局、彼は愚痴を誰かに聞いて貰いたかったのかもしれません。

幸い、会社は息子さんが継いでくれるとのことで、少しずつ移行しているとのことです。
他人のことながら、早く引退して、奥さんに掛かりっきりになれれば良いと思いました。

2016/11/17 07:31:35

友人の愚痴を

パトラッシュさん

聞いてあげる。
それは一つの、功徳です。
聞いてあげられる、余裕が自分にあることを、確認する意味もあります。

2016/11/17 07:31:11

生き方、死に方

彩々さん

何とも、やりきれないお話です。

生き方は、自分の知恵を持ってでも
進めていけるものだと思いますが、

「死に方」は、選べません。
神のみぞ知るという事だと思います。

胸に詰まるお話ですね。

2016/11/17 07:14:49

ぐでたまさんへ

吾喰楽さん

おはようございます。

>『何処へも行きたくない。早く天国へ行きたい』

この話を聞いたとき、何の返事も出来ませんでした。
コミュニケーションは取れるのですから、まだマシと思うのですが・・・

実は、私の父も同じ病気でした。
「こんな体になって、情けない」と、よく云っていました。

2016/11/17 05:06:07

おはようございます( ´艸`)

ぐでたまさん

読みながら私も泣けました。
体が不自由だと辛いでしょうね。
母が脳こうそくで倒れたときに同じようによく言ってたのでおもいだしました。

2016/11/17 04:41:16

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