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「同胞多き大穴牟遅神」 

2016年11月03日 ナビトモブログ記事
テーマ:俳句ポスト投稿

 「俳句ポスト365」は、愛媛県の松山市が運営する俳句の投稿サイトだ。その第155回 2016年9月1日週の兼題は、「湿地茸(しめじ)」である。兼題の説明に曰く。

湿地茸(秋の季語)「しめじ」。食用きのことして一般的。キシメジ科のほんしめじは、径4〜10cmで傘は茶色から灰色をしており、柄は7〜10cmの白色。秋に小楢林や赤松との混生林に生え、上品な旨味、歯切れの良さなどが絶品。

 俳句集団「宇宙(そら)」のメンバー5人による「湿地茸」に対する投稿の入選結果は、次のとおりである。

 灯影揺れ湿地茸の煮立つ四畳半   人選  津軽わさお  

 ふるさとに荒ぶる火あり湿地茸煮る    人選  津軽ちゃう 

 夜の部の跳ねし楽屋や占地茸汁  人選  津軽まつ 

 炊き出しに一息つく夜しめじ汁    人選  篠田ピンク  

 三内丸山の巨柱見上げる占地茸かな   人選  野々原ラピ

 
 「俳句ポスト365」では、全体3,000句程度の投句に対し、入選が「天、地、人、並」に分かれる。入選の「天、地、人、並」の内訳は、各回、天の俳句1句、地の俳句9句のほか、大体、人選の俳句200句、並選の俳句300句だ。

 今回の俳句集団「宇宙(そら)」による「湿地茸」に対する投稿の入選結果は、人選の5句は、言わば、上位210句内の句である。5人全員の人選5句は、俳句集団結成後1年1か月の初心者集団としては、否、初心者集団でなくても、大健闘である。


 それでは、3,000句中の栄えある一等賞の天の句は、どんな句か。何事も勉強の意味で、以下に天の句及び選者の夏井いつき先生の講評を掲げる。

 湿地茸生う同胞多き大穴牟遅神   天選  笑松      
      
  「湿地茸」は植物の季語。とはいえ調べてみると、ホンシメジ、ブナシメジ、ヒラタケを含んだ総称だというではありませんか。実にめんどくさい季語ではありませんか。

 勿論、食物として、シメジ飯、シメジ汁等を詠むのもあり!ですが、「天・地」には植物として詠まれている作品を推そうと、選者としてのキャッチャーミットを構えておりました。

 そこに飛び込んできたのが、「大穴牟遅神(おおなむぢ)」という神様の名。正しくは「おおなむちのかみ」あるいは「おおあなむちのかみ」と読むようですが、大国主神(おおくにぬしのかみ)の別名だそうです。記紀神話では、葦原中国(あしはらのなかつくに)を支配した神です。

  「同胞(はらから)」とは、母を同じくする兄弟姉妹、一般的な兄弟姉妹という意味でも使われる言葉です。

  「湿地茸」がくっついてポコポコ頭を並べている様子から、沢山の子どもを想像する句はほかにもありましたが、そこから記紀神話の時代へワープしてしまう発想が見事。

 さらに一句全体を読み通してみると、ちゃんと「湿地茸」の様子が見えるつくりになっているあたり、巧いものだと惚れ惚れします。

 「湿地茸」の集まった頭の大小は、生まれ出づる神々のようでもあり、「湿地茸生う」その場所は、かつての葦原中国(あしはらなかつくに)のような湿り気を思わせ、「しめじ」と「おおむなじ」の付かず離れず音の面白さもまた、一句の隠し味というべきでしょう。

  「湿地茸」で取り合わせの句を作るって、至難の業やろ……と思ってたので、作り手としての意志の置き所にも感服した次第です。


 以上に関する津軽わさおの勉強したところを以下に掲げる。

 俳句作りをしていると、学ぶことが多い。中でも、言葉を覚える。で、講評にある、ワープって何? ワープとは、大辞林に曰く。

瞬間的に移動すること。 SF に登場する方法で、三次元空間を四次元的に折り曲げて出発点と目的地をくっつけ、一瞬で目的地に行くもの。

 掲句の作者は、「「湿地茸」がくっついてポコポコ頭を並べている様子」→「沢山の子ども」、に留まらない。そこから更にワープし、つまりは、瞬間的に移動し、「記紀神話の時代」へ飛んでしまう。

 そして、具体的な取り合わせの構図は、次のようになっている。

「湿地茸生う」・「同胞多き」・「大穴牟遅神」

「湿地茸」の集まった頭の大小・生まれ出づる神々

「湿地茸生う」その場所・葦原中国(あしはらのなかつくに)という湿り気のある場所

「しめじ」・「おおむなじ」



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