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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港](二十二) 

2016年03月28日 外部ブログ記事
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 男は学生時代に熟読した、夏目漱石著の『行人』の中の一文を思い出した。
―男は征服するまでを燃え、女は征服されてから燃える。―

 そういった恋愛の機微が、今、男に初めてわかった。
いつの間にか情が移り半ば諦めの心で結婚するのかもしれない、とも思った。
 しかし男はまだ若い。
共稼ぎを嫌う男は、現在の収入では結婚生活は難しいと思った。
麗子の実家からの援助を受けることになるだろう。
しかしそれは、男のプライドが許さない。

勿論、麗子を愛しているし、共に生活をしたいとも考えていた。
しかしそれは以前のそれとは、明らかに違ったものだった。
結婚生活が実感として湧いてきたのだ。
夢見心地のそれとは、全く異質のものだ。

 全てを与えた、という自負心が麗子を大胆にさせたであろうし、又この人以外は愛せないと思いこんだこと、そして何よりも早く決めてしまいたい、との打算が働いたのも事実だ。
 男にしても、名実共に恋人となったことで責任感が芽生えてはいた。
?幸せにしてやらねば?とも思っていた。
しかし昨日の今日で、こうまではっきりと宣告されると、やはり若干の反発心が起こった。
ここにきて、男の心の中に渦巻いていたわだかまりが、昨夜男の心を重苦しくさせていたものが判然とした。

 一つ一つの行動・感情の動きにまで因果関係を持たせ、己を納得させている麗子が男は不満だったのだ。
気まぐれ・衝動、そういったもの一切を否定するがの如き麗子に、不満だったのだ。
昨夜のあの行為にさえも、?麗子なりの意義を持たせているのだろう?と男は思った。
 一つ一つを完全なものにしない限り、恋人は苛立った。
ちょっとした言葉の言い間違い・聞き違いによって生じたトラブルを、男が「多分‥‥」と曖昧に済ませることを、麗子は許さない。
とことん男を問いつめる。
上の空の返事や無言の折には、「ねえ、ねえ」と、明確な受け答えを求めてくる。
そういった小さなことの積み重ねが、男には我慢できないものだった。

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