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敏洋’s 昭和の恋物語り

にあんちゃん 〜介護施設で働き出した〜  

2016年02月18日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 缶コーヒーで喉を潤しながら、奥村の話が続いた。

「そのことはね、坂本さん自身も覚悟はされていたの。
でもね、面と向かって言われるとね、さすがに腹が立つわよね。
お義理だけでも、『一緒に暮らさないか』って、言って欲しかったのじゃないかしら」

 大きくため息を吐いて、奥村がまた話し始めた。

「元々、親子関係は良くなかったみたい。
退職後に奥さんと離婚されてね、息子さんは奥さんの味方をされたみたいだから。
坂本さんにすれば、裏切られたという思いなんでしょうね。

自分の城を、別れた奥さんにとられてしまうというか…。
そんなこんなで、誰一人として来られないのよ。
それからなの、今みたいにやんちゃなことをし始めたのは」

 窓に目を移したほのかの目に、チラホラと落ちる雪が見えた。

「あら、雪ね。今年は早いわねえ。
だけどね、息子さんの言い方もきついのよ。
『親父の介護なんて、無理なんだよ!』って、他の入所者にも聞こえるような大声で。

立つ瀬ないわよね、坂本さんも。
自暴自棄というのかしら、それとも地が出てきたというかしら。

会社内ならいざしらず、もう重役さんでも何でもないのに、人をあごで使うようになっちゃって。
セクハラとも受け取れるけどね、いえ今回のことはセクハラなのよ。

でもね、それ以前のことはね、違うような気がするの」

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