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敏洋’s 昭和の恋物語り

長編恋愛小説 〜水たまりの中の青空・第一部〜 (十) 照り焼き二個と、コーラ。 

2015年02月27日 外部ブログ記事
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「マックで、照り焼きバーガーを食べたいな。この間初めて食べたんだけど、すっごく美味しかった」
彼は、牧子の誘導尋問を無視して呟くように言った。
「ハンバーガー? うーん、もっと食事らしい物をたべないの? 遠慮はなしよ。ホントに、それでいいの?」
不満げに言う牧子に対し、彼は決然と答えた。

「いいよ。今は、そんな気分だから。(お姉さんの、おっぱいだと思って食べてやるう)」
どうしても、今ひとつ踏み込めない彼だった。
サラリと言ってしまえば、何のことはないのだが、どうしても言えなかった。

牧子の抱いているあるであろう、『礼儀正しい青年』というイメージを壊したくなかったのかもしれない。
確かに、牧子の心に警戒心が生まれるかもしれないが、それはそれで牧子の受認の範囲だったろう。
否、牧子との壁がより低くなったかもしれない。
しかし、まだ若い彼にはそこまでのことは…。

「いいわ、そうしましょう」
言うが早いか、牧子は彼の手を引っ張るように立ち上がった。

「うひゃあ、混んでる。まいったな、こりゃあ。他を当たりますかあ」
カウンターの中で五人の女性が応対しているが、長蛇の列になっていた。
彼は、肩をすぼめながら牧子の表情をうかがった。
牧子も唖然とした表情だったが、
「仕方ないわよ、昼時だもの。他の店も、似たようなものだったわよ。
良いわ、私並んでる。ボクちゃん、席を確保しておいてくれる。
そうそう、照り焼きでいいの? 飲み物はどうする」
と、諦めの顔で答えた。

「わっかりました。じゃあね、照り焼き二個と、コーラ。
一つをセット物にすると、ポテトチップスが付く筈だから」
「えぇっ、二個も? 大丈夫なの、少しくどくない」
「OK、OK!」
彼はそう答えるや否や、すぐに席の確保のために牧子の元を離れた。
“さすがに、若いのねえ”後ろ姿を見やりながら、牧子は苦笑を禁じ得なかった。

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