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ショート・ストーリー2【名前の無い関係】 

2015年01月28日 ナビトモブログ記事
テーマ:恋話

お読みくださる方へ
【名前の無い関係】はタイトルだけ決め、書き出した
男と女のS・ストーリーです。
前半、後半くらいでまとめるつもりが、書きながら
膨らませることも、小さく、小さくまとめてしまう
事も出来る男と女のお話です。

でも、小さくまとめられず、苦悶中。

だって、男と女の話しです。まとまりません。
しかも、全編書き終えないでUPするのは初めてで
して…(汗)
こんなに自転車操業がしんどいとは思いませんでした。
よろしければお立ち読みくださいませ。  彩々

  ==================

・・・

そう、風の悪戯をきっかけに「風の君」と「あなた様」は、あれから一年の時を刻んだ。

里子は時々、このたった一年という時間を
愛おしい想いで、その時々の事を映像と共に
思い出す。
会社の近くにあるBar「昴」には、あれ以来
2-3度待ち合わせて通ったか…

ほんの数秒の時間の重なり合いで、一つの物語が
動きだし、それぞれの人生に変化をもたらす。
それが、たいした物語で無かろうが…、多大な
影響力をもたらす物語なのかは、人生の終盤に
ならないと誰にも解らない。
里子にとって、彼とのこの一年の付き合いは
「さらり」という言葉でしか表現できない程、
良い距離感を保つ関係で居られたと思っている。
自分は、そう思っているが…彼は二人の関係を
どう思っているのか…
里子は、そんなことを彼に問いかけてみようとも
思わない。
言葉はいくらでも飾ることが出来る。
里子は二人の関係を言葉で飾ったり、決めつけたり、
回りくどい言葉で言い表すこともしたくない。

彼には違う場所で、彼には彼の人生が広がって
いるからだ。

里子も46年間、一人生きてきたことに後悔を
したことはなく、今の生活に満足しながら
生きているつもりなのだから。

それでも、里子にも痛みの思い出が無い訳ではない。

まだまだ無邪気な高校一年生の時、里子は
子宮内膜症を発症している。
女性特有の病名であるが、高校生の里子には
親にも親しい友人にも「子宮」とか「卵巣」と
いう言葉を口に出すことが出来なかった頃である。

少女から大人へと成長する速度は、ここで急速な
流れに変わる関所のような年代がある。
女性にとって、身も心も大きく変化する
ターニングポイントといえる第一関門なの
かもしれない。
その頃の里子は、排卵日前後から激しい生理痛に
襲われ、生理が終わっても身体の芯のところに
鈍い痛みが去らず、かなりの我慢をしながら
過ごした時期がある。
結局、見かねた母親に説得され、連れられて、
初めて婦人科の診察を受けることになり、
「子宮内膜症」という病名であることを告げられる。

初めての婦人科の診察は、恥ずかしさと屈辱的な
思いに晒されることへの恐れが入り交じり、
混乱した…。
しかし、診察台に上がると、月の半分を痛みに
襲われる自分の身体を‘もう、治してほしい’という
望みだけに変わっていた。

17歳という年齢も考慮され、擬閉経療法という 
薬剤投与により閉経期同様のホルモン状態にする
という治療法となった。
里子にとっても母親にとっても、初めて耳にする
エストロゲンやプロゲステロンという黄体ホルモン
への薬剤投与で、その後の若い身体に表れてくる
デメリットも心配しながら、当時の里子には痛み
からの解放が先決であった。
半年間の治療後も、里子は風邪を引いたと言えば、
まず婦人科の主治医を頼りにし、風邪薬も処方して
もらうなど、婦人科とは21歳の完治期まで縁が
切れることがなかった。

主治医の女医であるS先生は、初診時の里子のことを
思い出し、「里子ちゃんを見ていると、里子は
ハンサムウーマンだと思うよ」
「だって、里子ちゃんの潔さは見事だもん!」と、
里子には訳のわからない褒め言葉で表すことがあった。

里子は、婦人科に来て「ふぅ〜ん、ハンサムねぇ…」
そう言われ、悪い気はしなかったことを思い出す。
しかし、二十歳の成人式前に「この先、子どもは
出来にくいかも知れないねぇ。産めないかも知れない…」と、あえてクールにS先生から告げられていた。

これが里子の女としての生き方を育て、同時に里子のコンプレックスになったことは間違いなかった。
時には、言いようのない淋しさに一人襲われる日が
今もある。


やがて…、部屋のチャイムが鳴り玄関ドアーを開けると、そこに彼が立っているだろう。

この時間が里子にとって今、一番意味ある大切な「二人だけの時間」だと思っている。
里子の部屋の前に立つ彼。

扉の内と外。

唯一、彼と同じ思いでいることを確かめ合える
一瞬の時。
里子にとってこの一瞬こそ、彼は里子だけを想い、
また里子も彼だけを想う時間なのだ。
扉を開けると、そこにはもう現実が広がる。

一週間から数週間、会えない時間は、それぞれが
持つそれぞれの時間である。
その間、どのように暮らしているのか…、
どうだっていい。
大切な人への、大切な事柄に対する、その接し方、
考え方も二人には共通するものが多い気がする。

空白になっている時間は、ドアーを開けた瞬間に
お互いが感じとり、嗅ぎ合うことで理解することが
できる。
里子も彼もそうした感覚を持ち合わせているからこそ、この一年、身体も心も共有することが出来たと
思っている。

そして里子は、扉を開ける。

         ・・・つづく       



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情景が浮かびます。

秋桜さん

お互いを束縛せず、わかりあえる関係。
素敵です。
彩さんの隠された才能がどんどん開花しますね!

2015/01/31 17:43:39

澪さんへ

彩々さん

続けて読んでくださってありがとうございます。

と、いう事は現在進行形でしょうか、
            澪さんは!?

恋愛感情も歳と共に変化して行きますね。
これ先、如何につなげようかと苦戦中。><

2015/01/29 16:13:12

素敵な描写です!

澪つくしさん

この二人の間の距離感・流れる空気・・・

若い頃の私には、理解できなかったでしょうが、
今の私には、分かる気がします。。。( ̄ー ̄)。oO
 (イ・ミ・シ〜ン・・・)

2015/01/29 14:30:15

シシーマニアさん

彩々さん

おはようございます
コメントありがとうございますm(_ _)m
とても嬉しいコメントに恐縮しています。
ピアニストとしての豊富な経験がおありで
本もたくさんの読んでおられるシシーマニアさん。

書くことの作業は素人の粋を出ない私ですが
お気楽に立ち読みしてくださるには、調度
良いのではと、書き始めたものです(汗)

秋桜さんも森瑶子さん風だとおっしゃってくださってますが、おしゃれ路線を狙った訳ではなく、
自分を46歳まで、タイムススリップさせ
今ならどうするか…
そんな感じで、書いているところです。

速く最終話に持ち込みたいと思うばかり。。。
いく着くかしら!?
またお寄りくださいね。

2015/01/29 06:09:17

森瑤子ファンです

シシーマニアさん

このシニアナビは、同人雑誌だったのかあ、と思ってしまいました・・。
みなさん、凄い顔ぶれですね。お互いに切磋琢磨されているのでしょうけれど、何だか素晴らしい世界に紛れ込んだ気分です。

勿論、分相応に参加させて戴こうとは思っていますが、大変な刺激を受けました。

森瑤子ファンとしても、続きが楽しみです。

2015/01/28 21:19:08

そうでしたか…

彩々さん

でも、ヨカッタですね!

子を成して、女性も男性も成長していける
ものと(お子さんのいない方、ごめんなさい)
思います。
私は子宮系には支障がなかったですが、妊娠は
してもすぐ流産、また流産と…
6歳違いの二人は無事に生まれたものの、
二人目までの間、流産は6回も経験しました。
自分の身体であって、そうじゃないことが
辛かったです。
人生、色々な事があり過ぎた感あり。

2015/01/28 12:07:12

子宮内膜症でも

さん

私も、同じ病で、あまりにも生理が重いので、まだ処女なのに婦人科受診しました。
周りは妊婦さんと、水商売風の女性はもしや?とか、とても緊張し、診察は、死にたいほど恥ずかしかったです。

私も、子供ができにくいかもしれないから、将来、それで困ったら、又、受診するように言われましたが、結婚して「まぁ、大丈夫だろう?」と油断した、たった一回で息子ができたから、わかりませんよ。(笑)

2015/01/28 11:20:13

Yさん

彩々さん

そうですか…
やはりお知り合いの女性もお子さんが
お出来になれなかったのですね。

私も先日、若い友人が籍を入れるというので
喜んでますが、彼女も子宮内膜症の治療を
したことがあります。
相手も解っているとは言え、43歳の彼ですから
子を持てないことも覚悟しなければならない
かもしれません。
人生、何を持って良しとするかですね。

2015/01/28 10:30:39

喜美さんへ

彩々さん

おはようございます

朝から現代ものと時代物を行ったり来たりして
読むと、頭、疲れちゃいますね。

何も知らず…そうおっしゃっても人の
人生には紆余曲折、あるものです。
それを乗り越え、なんてことない風情で
生きておられる喜美さんは、私たちの
お手本です。

Soyoチャンのは、本格的時代小説。
私のはお疲れが出ない程度に、立ち読み
してください。

2015/01/28 10:26:07

おはようございます。

さん

ふたりの仲を取り持つ、なんて巡り合わせで
結婚した新居に伺ったとき、本棚の片隅に
「子宮内膜症」とタイトルするのがありました。

三十路を過ぎた嫁は身近に感じた存在でしたので
なにかと心配事にも相談に乗っていたけれど、
これには、話したところで分らない事であると思った
のでしょう、驚きました。

その後に旦那と考えのソゴなどが生じまして会う機会
などが無くなりましたが、そんな彼女も既に五十路も
半ばに差し掛かり、子は生まれないまま。

胸中には、どのような想いが秘められていたのか
そんなことを「子宮内膜症」で思い出しました。

2015/01/28 09:53:14

こんな世界

喜美さん

私頭こんがらがっちゃう
今SOYさんの見せて頂いて
此れでしょう 人生色々あり過ぎ 私みたいに何も知らず気ままの人も中に入るかしら 
此の大人の二人 次どうなるか楽しみです

2015/01/28 09:41:32

ゴク兄いへ

彩々さん

感想に困られたようで…

>婦人科については、全く疎い吾喰楽です。
  ↑
  当たり前!(笑)

でも、コメントありがとうございますm(_ _)m

こんな女性の女心のお勉強になるかもしれません。
今更、遅いって…!?

2015/01/28 08:30:32

Soyo姐さんへ

彩々さん

お忙しい中、コメントm(_ _)m

(今さっき、返コメした分、全部消えちゃ〜泣)

うん、うん!
>自転車操業も、結構スリルがあって

PC前に居ながらにして、ジョギングしたような
カロリー消費を感じます。。。
確かに、癖になりそうな!??

2015/01/28 08:25:21

男の私には・・

吾喰楽さん

おはようございます。

婦人科については、全く疎い吾喰楽です。
その詳細な書き方が、作品全体の雰囲気を作っているようです。

「女心は量り難し」を、私には感じさせます。

文章は推敲を重ねた、力作だと思いましたよ。

2015/01/28 08:17:11

Reiさんへ

彩々さん

感想をありがとうございます。

>登場人物がどう動いていくのか、全くわからなくて…

そうだと思います。
私だって解らないのだから(笑)

気の短い人には合わない作だと思ってます。

2015/01/28 08:10:33

まだまだでございます

彩々さん

パト師匠へ

いくら彩々とて、このような名を拝受する
訳は行きませぬ(時代物がかってる!?)

彩々 改め、「歳々」くらいが調度よろしゅう
ございます。

歳を重ねた分だけこんな男女の関係も有りかと、
思いつき、書き出して…えらいことになってます(笑)

2015/01/28 08:07:13

大人の雰囲気

さん

彩さん おはようございます。

今回は、里子が一人で生きて来た背景を描きながら、さらりと「風の君」と「あなた様」の関係を描いてあるのね。

里子の過去はわからなかったけれど、二人がこんな、湿っぽさの無い、大人の関係になると思っていたわ。

逢った時だけ、お互いを見つめ、離れている時は、それぞれの時間を過ごす。
お互い、自立しているからこそできる関係だけど。
男は多分、家庭持ち、女は寂しくないのかしら?
ちょっと、そんな事を感じてしまったわ。

でも、洒落た都会風ラブストーリーで素敵よ。

自転車操業も、結構スリルがあって、、私は、つい最近までずっと、そうだったし、今朝のアップも、殆ど昨日の夕方書いた物。
慣れたら、面白いかもよ?(笑)

2015/01/28 07:18:46

大人のストーリー

Reiさん

オシャレな物語ですね。
これから登場人物がどう動いていくのか、全くわからなくて…
そこが、何とも言えない魅力になっていると思います。
やっぱり、姉弟子、すごいです!!

2015/01/28 07:16:36

感嘆!

パトラッシュさん

そして敬服。
実にうまい。
ここに「彩女」の名を呈します。

2015/01/28 07:09:22

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