ナビトモのメンバーズギャラリー

条件で調べる

カテゴリ選択
ジャンル選択

前の画像

次の画像

ギャラリー詳細

作品名 67になっても、たまにはデートしたい(47) 評価 評価(1)
タイトル 67になっても、たまにはデートしたい(47)
投稿者 比呂よし 投稿日 2014/04/10 13:37:19

+++先の演出家を気にしたりするのは、私が女に惚
れていたせいかも知れない。河井継(つぐ)之助で注
意を受けるなど、そんな遠慮の無い女の物言いが好
きで、女を一層魅力的に見せていた。

47.芸術品

 パトロンについては、支援額が多くても、バレエの
練習時間を多く奪われるのを女は好まなかった。そ
れに、「デリカシーが無い人なら、あのロケット男の
方がまだましよ」と贅沢を言ったりしたから、私が紹
介しても続かないパトロンが何人かいた。
 しっくりしない男に女は何時までも執着しなかった
のである。

 そんな中で支援が一番不充分な私を、女は特別扱い
していた。どうしてそんなに気に入ってくれたのか良
く判らない。愛人というよりも、恐らく年齢的に父親
に対するような安心と気安さを感じていたのだろう
か。

 実際女は私に、実家の身内の様子や祖母の話や、出
来の良くない弟の事を愚痴るなど、外聞を憚る内輪の
話なども打ち明けたりした。
 女には特に親しい同性の友人が少なかったようで、
故郷から遠く離れて大都会の大阪で独り暮らす寂しさ
もあったのだろうか。私は何時も最後まで、きっちり
女の話に耳を傾けてやった。

 相槌を打って隅々まで聴いてやると、女は何時もす
っきりして、何か安心する風であった。もっともお陰
でこっちは、ホテルで過ごす時間が大分犠牲になった
のだが。
 因みに、男が聞き上手に徹すれば、必ず女に好かれ
るものである。もし家庭で夫がそうやれば、家庭内の
揉め事や夫婦間のトラブルの大半は解決するに違いな
いと思うが、これがちゃんとやれる夫は極めて少な
い。六十七の歳の功で、私はそれが割りと上手だった。

 若い時分のようには、私は女にガツガツしていなか
った。この歳だし、ワレがワレがと突っ張って安っぽ
い男のプライドを誇示する必要も無い。知らない事は
知らないと何に拠らず正直だったからか、そんな処も
女から信頼を寄せられたのかも知れない。
 年齢と立場は違っていたが女を対等に扱い、私は異
性の友達として関係を楽しむ気持ちが強かった。相手
を決して批判せず、相手が困ったら、一緒に困った顔
をして見せた。

 バレエにひたむきに生きる若い女のエネルギーが眩
しく、敬意さえ払っていた。年齢という引け目があっ
た私は、デートの度に女へ感謝の気持を伝えた。お
礼に、事後浴室で女の体を丁寧に洗いながら:
「僕の体には毒があるんだ。触った処はちゃんと清め
ておかないとね。そこから腐るんだよ」
 女はおかしがった。

 タオルで体を拭ってやりながら、私は女を愛してい
るというより、芸術品として慈しんでいた。実際芸術
品のように美しいと思った。

(比呂よし)

前の画像

次の画像



【比呂よし さんの作品一覧はこちら】

最近の拍手
全ての拍手
2014/04/10
MOMO
2014/04/10
みのり
拍手数

2

コメント数

0


コメント

コメントをするにはログインが必要です


同ジャンルの他の作品

PR





上部へ