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作品名 エライコッチャの話(5) 評価 評価(1)
タイトル エライコッチャの話(5)
投稿者 比呂よし 投稿日 2013/12/16 09:34:45

+++蒸気機関車みたいにおしゃべりがばく進する。
こんな時、シュッシュッと鼻と耳から勢いよく蒸気
が出る感じになる。

5.六十過ぎの仕事

 この実験を暫く続けて判った事がある。 ただ聴い
ていて、時々「ソラ、エライコッチャ!」の合いの
手を入れるだけなのに、配偶者の機嫌が以前よりも
格段に良くなり、家庭内に平和が訪れ易いのに気付
いたのである。

 平和というと、男は世界情勢の狭い範囲しか念頭
に無いが、広く家庭内でも実に貴重な問題なのであ
る。身の回りが、冬だのに春の訪れみたいにポカポ
カとなり、食料の配給事情も確かに好転した気がす
る。

 出されるコーヒーに、砂糖が従来の一つだったの
が二つ付くようになったし、蜜柑の皮も剥いてくれ
ようになった。驚くなかれ、アーンとすれば口に入
れてくれる事さえある。私を取り巻く世界が、一変
したのだ。これを私は、倦怠期以来「画期的」と呼
んでいる。

 「聴く」という努力と忍耐が、確たる成果を挙げ
たのを、アメリカ大陸に継ぐ発見ものだと私は考え
た。夫婦関係をよくする為に、愛情がどうとか、思
いやり云々とか色々難しい事を言われる。が、本当
はそんな手間を掛けなくても、ただ単純に夫が妻の
話を、お仕舞いのピリオドまで含めて「とことん聴
く」の一事で、解決する気がする。

 しかも「何ら反論せずにーー」が大事である。出
来れば時々「エライコッチャ!」の合いの手を入れ
られれば、もうパーフェクト。

 最近の私なんか、テクは既に名人の域で、渓谷の
奥から聞こえるうぐいすの声みたいに、おしゃべり
に「聞き惚れる」域に達している。
 この技術は案外応用範囲が広く、女友達の「38
バツイチ子持ち昆布」を口説いてたぶらかすにも、
実に効果的なのである。二三度は、ホテルに連れ込
むのに成功した。

 「ながら族」を廃業した結果、「ながら」を平行
してやれなくなった分、人生で多くの時間が失われ、
寿命が短縮した気がしないでもない。が、良く考え
てみれば、短縮したとて、なに、私の人生など寿命
にの長短に代えて緊急にやらなければならない程の
大事があろう筈は無い。
 それよりか、六十を過ぎると、一日一日夫婦であ
る事の方が、もっと大事な仕事であるような気がし
ている。

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