ナビトモのメンバーズギャラリー

条件で調べる

カテゴリ選択
ジャンル選択

前の画像

次の画像

ギャラリー詳細

作品名 ウルメの話(3) 評価 評価(1)
タイトル ウルメの話(3)
投稿者 比呂よし 投稿日 2013/11/30 12:01:21

++++きっと裏に何かあるに違いない、と私は9
本のウルメを凝視して流石に怪しんだ。

(3)

 ハタとひらめいた: ひょっとしたら「通」とはこ
の私一人で、これまでウルメを買っていたのはこの
地域で私だけなのではあるまいかーーー!? 
 私が四週間前に初めて目にして売れ残りを一袋買
ったのは、実は売れ残りではなく、それが仕入れの
全量だったのではないか? そうすれば、それ以後
私が買っていたのも、毎回全量だった事になる。

 となるとーーー、もし私が本日買うのを中止でも
すれば、仕入れ量3袋全数が「初めて」売れ残りと
なってしまうではないか! デパートは大損害にな
る訳で、仕入れ係りはがっかりする。事の重大さに、
私は初めて気が付いた。

 そんな事態になれば、「やっぱり売れない」と判
断して、仕入れ係は高知産のウルメの扱いを全く中
止してしまうに違いない。私は71でもう歳だし、
無限に寿命が有るわけは無い。ここでうまく立ち回
らないと、ウルメを今後口に出来なくなり、残りの
生涯の大損になると計算した。

 それに、私よりも若い筈の「仕入れ係」の立場も
同時に思いやった。立身する為に、デパ地下の売上
げを上げる工夫など、人に言えぬ苦労もあろう。

 迷いの岐路に立った私は、三袋のウルメを前にし
ばし黙考した末、とうとう思い切った決断を下した。
三袋全部を買い占めたのである。デパートは今週も
又、完売を達成。

 私が意図した通り、これは「仕入れ係」を激励す
る結果となった。が、世の中の大抵の現象は「過ぎ
たるは及ばざるが如し」のように起きる。それが私
の予想を超えて起きた。
 仕入れ係は、感激の余り極端な思想に走ったので
ある:「需要が沢山あるのに、仕入れ量が今までは
まるで少な過ぎたわいーー。これは売れるぞっ!」
と、恐ろしい勘違いを起こした。

 次の週には5袋が売り場に売れ残った。私は全量
を買占めた。又もや、完売。仕入れ係は「ますます、
売れる!」と、確信を深めて感激した。感激は週毎
に着々と膨らんで行き、 その次の週は10袋(=
30本)が並んだ。
 
8000円近い。が、なに、私の財力からすれば
何て事はない。また、買い占めた。 その次の週は
15袋となり45本となった。これはもう戦争であ
る。意地の張り合いで私は買い続けたから、ゆくゆ
く高知県全体を買い占めるのは時間の問題になった。

前の画像

次の画像



【比呂よし さんの作品一覧はこちら】

最近の拍手
全ての拍手
2013/11/30
2013/11/30
2013/11/30
みのり
拍手数

3

コメント数

0


コメント

コメントをするにはログインが必要です


同ジャンルの他の作品

PR





上部へ