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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百六十八) 

2023年06月23日 外部ブログ記事
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「武蔵は、ほんとに小夜子が好きなんだ。それは分かるね? けども、武蔵の女あそびは、病気だ。どうしようもない。女あそびを止めちまったら、武蔵は死ぬかもしれない。それくらいの大病だわ。どうだろ、小夜子。いろいろ含むところもあるだろうけれど、ぐっと飲みこんでおくれでないかい。女のふところの深さを見せておやりな。いや案外のこと、子供でもできたら、変わるかもだよ。あたしの知ってる男に、そういうのが居たよ。そうだ、ぴたりと女遊びを止めるかもね。子どもベッタリとなるかもよ。もちろん武蔵には、あたしから釘を刺しておくから」
梅子の思いが、どれほど小夜子に伝わったか。小夜子自身、武蔵の女遊びについては、諦めの思いがないではなかった。それが男の活力源だと公言してはばからない武蔵だ。「女あそびを止めちまったら、武蔵は死ぬ」。梅子のことばは本当かもしれない。肉体は生きても、こころが死んでしまうかもしれない。そう思えてきた。しかしやはり許せるものではなかった。
 翌早朝にいぶかる武蔵にはなにも告げずに、さっそく大学病院へと向かった。大勢の妊婦でごったかえす待合室で、その自信にみちあふれた顔つきに圧倒された。ここでは御手洗小夜子という名前は、まるで通用しない。ただの小娘でしかない。
「おや、おじょうさん。おめでたかい?」 大きなお腹をさすりながら、人なつっこく声をかけてくる。「この子がねえ。よっぽどあたしのお腹の中がいごこちが良いらしくて、なかなか出てこないんだよ。あたしゃ、もう三十になるんだけどね、初産なのさ。やっと神さまがおさずけくださった赤ちゃんなんだよ。だから大事に大事にしてきたんだけど、お医者さまは『大事にし過ぎたからだ』なんておっしゃるんだよ。でもねえ、そんなにいごこちが良いのなら、もうすこしって考えたりもするんだけど。そしたら、お医者さまにこっぴどく叱られて。『このままじゃ、大きくなり過ぎる』ってね」
 おなかをさすりながら「おお、よしよし。そんなにそこが良いのかい」と、ひとりごちる。「出産のときに、あたしはもちろんのこと赤ちゃんも苦しむって言われてね。あたしはいいんだよ、あたしはね。けども、赤ちゃんを苦しめるわけにはいかないわ。でね、かいだんののぼりおりが良いって聞いたから、毎日つづけてるんだよ。いまもね、そこのかいだんをのぼ゜りおりしてきたところさ」と、聞きもしないことをべらべらと話しかけてくる。 どうやら新参できたものすべてに話しかけているようで、そこかしこで「またはじまったよ」という声がとびかっている。しかしそんな声など、どこ吹く風とばかりに、日常のことを話しかけてくる。
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