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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (三百六十五) 

2023年06月15日 外部ブログ記事
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「梅子さん、ちょっと。ひょっとして」と、実千代が小声でささやく。「やっぱり実千代もそう思うかい? あんたのお姉さん、おめでただったものね。うんうん、そうだよ、きっと」「小夜子、今夜はお帰りな。で、しばらくの間、出入り禁止だ」 えっ! と不満げな表情を見せる小夜子。そして安堵の表情を見せる竹田。「いいかい。明日にでも、医者に行きな。違う、違う。産院だよ、産院。十中八九、おめでただよ。どうだい、月のものが遅れてるだろ? まちがいない、おめでただよ」
「社、社長に連絡してきます。こんな所にいてはだめですから、すぐに帰りましょう」 あわてて立ち上がる竹田だが、当の小夜子は悠然としている。「竹田! そんなに慌てることはないわ。明日調べていただいてからでいいの! もし違っていたら、どうするの。がっかりさせることになるでしょ。それに、竹田が報告すべきことでもないでしょ。あたしの口から、武蔵には話します。余計なことはしないで。」と、ピシャリと言い放った。そしてそんな小夜子を、梅子が慈愛に満ちた目で見つめている。
 三十路も半ばを過ぎた梅子、小夜子にはひとりが淋しくはないと言いきった。たしかに淋しさは感じていない。「父なし子!」と指をさされて、幼いころからひとり遊びをつづけてきた。孤独感とは無縁の梅子ではある。しかし将来のことを考えたとき、言いしれぬ不安を覚えている。
これといってはっきりとした不安ではない。ただ漠然とした不安感におそわれるのだ。不思議な感覚なのだが、身近なことではなく、遠い外国の地――アフリカ大陸における子どもたちの飢餓問題に泣けるのだ。
“なにを弱気になってるんだ! 天下の梅子さんだぞ。女傑と言われる梅子さんだろうが”不安感におそわれるたびに、自らにそう言い聞かせている。しかし時として“あの男の求婚を受けていたら、あたしの人生はどう変わったろうね”と、考えることもある。男との生活を、思い浮かべることがないわけではない。
しかし決まってその後に“こんなうわばみ女を嫁にするなんて、可哀相じゃないか”と、収まるところにおさまっていく。“子ども、か……。やっぱり、欲しかったねえ” 求婚をしてきた男の子どもではない。常連客との子どもだった。生理不順の続いていた頃のことで、まさかという思いが強かった。異変に気づいたのは、皮肉なことに男の方だった。“食べ物の好みが変わったじゃないか”そう言われてから、ひょっとして? と飛び込んだ婦人科で、妊娠を告げられた。

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