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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜(二百八十五) 

2022年11月16日 外部ブログ記事
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「そんなことより、そのかんげい会のお話を聞かせてください。どんな風でしたか?」と、身を乗り出してせがむ千勢だ。「もうねえ、どんちゃん騒ぎ。実家での宴もそうだったけど、みんな勝手に盛り上がるのよ。主役のはずのあたしなんか、初めの内こそそれこそこそばゆい位褒めてくれるんだけど。お酒が回り始めたら、もうだめ。主役のあたしそっちのけよ。ダンス音楽なんか流して、男同士と女性同士に別れてダンス大会よ。びっくりしたのは、加藤専務よ。あの人、泣き上戸なの? ぼろぼろ涙を流してね、あたしにしきりに『ありがとうございます』って、お礼ばっかり。びっくりしちゃった、ほんとに」
 身振り手振りでの小夜子の説明に、その場のことが千勢には目の前での出来事のように感じられた。そしてそれほどまでに愛されている小夜子が誇らしくあり、「その方のお世話ができるわたしって、ほんと、幸せものだわ」と思えた。 「嬉しかったんですよ、きっと。加藤せんむ、お酒によわれると、まいどのように言われるんです。『俺は女を不幸にしてきた、喰いものにしてきた。だから俺は幸せになれない、なっちゃいかんのだ。なれなくても仕方ないんだ。でも、いやだからこそ、武さんにだけは幸せになってもらいたいんだ。分かるか、千勢? もちろん、千勢よ。お前も幸せになるんだぞ』って。お見えになるたびにですよ、耳にタコができちゃいますって。あたし、加藤せんむのお声がかりで、だんなさまのおせわをすることになったんです」 意外なことを聞かされた小夜子だった。思いもよらぬ五平の一面を知らされて、武蔵が五平を頼りにする理由を知った気がした。しかしそれでもなお、五平に対する嫌悪感は消えはしなかった。
「そうなの? 千勢もだったの。あたしにしても、加藤専務なのよね。嫌だ嫌だって言ってるのに、強引に」 口をとがらせながらの小夜子に、どうして五平を嫌うのかが理解できない千勢だった。親身になって女たちの愚痴やら苦労話を聞いてくれる五平に、不満のことばを並べ立てる小夜子が、正直のところはわがまま娘としかみえなかった。“おじょうさま育ちの小夜子さまだもの”。小夜子の育ちを知らぬ千勢には、現在の小夜子だけが小夜子だった。
「おっしゃってました、加藤せんむ。すごく良い娘がいるからって、だんなさまを必死にくどいてらっしゃいました。はじめは乗り気じゃなかっただんなさまも、だんだんその気になられて。遊びなれてる店だから気楽にいきましょうゃとも、おっしゃってました。たばこを売ってる娘ですから、たばこひとはこでも買ってやればいいんですからって」 興味津々の思いでいる小夜子だが、千勢にはそう受け止められたくない。“聞きたくもないけれど、千勢が勝手に話すから聞いてあげるわ。聞き流すのよ、別に傍耳を立てるわけじゃないから”と、平静を装う小夜子だった。

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