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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (二百二十九) 

2022年05月06日 外部ブログ記事
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「申し訳ございませんでした、杉田さま。当方の手違いで、このような場所にご案内いたしまして。ただいまお席のご用意ができましたので、どうぞお二階の方へ」 薫の悪戦苦闘ぶりに気づいたマネージャーが、2階席に用意させた。杉田の来店には気づいたのだが、いつものひとり来店と決めつけてしまったことを悔やんだ。そして正三に対する他の者たちの気の遣いようから、相当の上客になると判断もした。
「本日のご会計は、大サービスさせていただきますので」と、杉田に耳打ちする。それが隣に陣取っていた正三に聞こえた。「不愉快です、ぼくは。金をけちろうなどとは思わない。楽しませてもらった分だけは、きちんと正当に払います。信用できないと思われるなら、前金でもいいんだ!」 “職員の前では、尊大にしろ。店の女どもになめられるようなことはするな。金払いもキチンとしろ。高いと思っても、決してケチるな。同僚、上司でもだ。正三、お前がおごってやれ。そのかわり、業者には払わせろ。ただし、全額はダメだ。少額でもいいから、わたしの分ですと渡せ” 叔父の源之助から、事あるごとに聞かされている。
 慌てたマネージャーが、平身低頭して詫びの言葉を並べた。「男だねえ! 気に入った。ターちゃん、ほんと良い男を連れてきてくれたわね。マネージャー、勝負よ。このハンサムボーイと、あたしたち女給との勝負よ。なんとしても、楽しんでもらいましょ。満足してもらえるように、せいぜい尽くしましょう。そうと決まったら、秀子さんと光子さん幸子さん、それから……選ぶのも面倒よ。全員呼んじゃえぃ! 入れ替わり立ち代りと行こうじゃないの」
 急ごしらえのボックスは三つのボックスをまとめたもので、通路を塞いでしまっている。ボーイたちの動きがぎくしゃくとして、それが正三たちの笑いを誘った。「課長、薫さんは女傑ですね」「だろう? あたしは、いつも叱られているんだよ。でもね、それが不思議と良い気持ちになるんだよ」「ターちゃん。叱ったあとの、これがだろ?」と、杉田の頭をなでる仕草をした。にやけ切った杉田の顔が、また笑いを誘った。「秀子さ〜ん、ぼくにもしてよ〜!」「光子ちゃ〜ん。僕は、接吻して欲しいよ〜!」「だったら俺は、このスカートに潜り込みた〜い!」
 あれほどに怒り狂っていた面々が、各々に着いた女給相手にふざけ合っている。しかし、ひとり正三だけは入り込めずにいた。“こんな場所で、小夜子さんは……。どんなに心細かったことだろうか。誰かを頼ったとしても、誰がそれを責められようか。ああ、ぼくは何てことをしてしまったのか” あれこれと話しかけてくる女給を見るたびに、その誰もが小夜子に思えてしまう。

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