どうでも雑記

雪崩 

2022年03月26日 ナビトモブログ記事
テーマ:青春の回想

青春の回想
富士山遭難事故 5、雪崩

20日の夜、それまで何度か雪崩の音がした、この場所もやられるのではないかと危機感が増すが、暴風雨の中、動くのは体力の消耗、低体温症、雪崩の誘発になるので、余計に危険だった。

10頃だった、雪崩の音が少し長く聞こえたあと、自分の居る雪面が動き出したと感じたら一瞬に流された。10秒ぐらいだったと思う。
テントにくるまった状態流された、二人でスクラムを組むような姿勢で踏ん張る。ピッケルはテントの外だ、アイゼンも外していた。ただ流されないように踏ん張るだけだった。

我々のいた場所の積雪と雪崩れた雪の量が少なかったのか、雪崩の中に埋まらなかったのが幸いに雪上で止まった。怪我もないが身体は何か所も痛い。

雨風は強くて真っ暗なので行動できない。近くにいる仲間やSI山岳会の人達も、同じような状況でいるのだろうと思っていた。

その後、雪崩の音を何度も聞くことで、我々は雪崩の本流から避けられる場所を探してビバークしていたが、雪崩の本流に引き込まれるように雪崩れてしまった。身体の痛みと寒さに耐え凌ぐ我慢(闘い)の時間が長く続いた。

日が変わり3月21日の朝5時、雪崩に流されたのと、16時間のビバークで足腰が痛くて動けない。何とか身体を動かしながら、ツエルトテントの外に出る。

暴風雨はおさまり静けさが戻っているが、まだあたりは暗く、濃霧で視界はきかない。
それでも少しずつ明るくなるにつれ、周辺の地面が露出しているところを、しばらく呆然と眺めながら、雪崩の大きさを知って動けなかった。

仲間を何度も呼んでみたが応答はなかった。荷物も見当たらない、どこからも何の音も声なく、人の存在を感じるものはなかった。

一緒にいた相方は右足を凍傷にやられて足を引きずりながらやっと歩く。30mぐらい上部で地面が露出したところがビバーク地点で、我々のピッケルが2本刺さっていた。
更に周辺には仲間とSI山岳会のピッケルとアイゼンなどが残っていた。
後々のことも考えて、この地点に目印を付けて残留物はそのまま置いておくことにした。

雪崩の後を辿るように仲間を探しながら下山を始めた。一時的には晴れのような朝だったが、やがてガスがかかり、見通しの悪い状況になる。
仲間の下山を願いながら、何か見つからないかと探しながら下る。

雪崩の大きさを知ってからは、仲間は雪崩に巻き込まれたかもしれない。思いたくないが、そんな気持ちにもなった。
この広大なデブリ(雪崩跡)の中を探すのは無理、生死を考えれば、より早く下山して救援を頼むことだとして、雪面を探しながら下山を急ぐが相方は脚を引きずりながら歩く。

下山を始めて1時間ぐらいすると、下から人の声がした。それは先に下山した人の通報を受けての救助隊だった。状況説明と自力で下山できることを伝え、二合目の大石小屋に向かう。

ところが濃霧と雪崩の跡でルートを見失いそのまま降りたら、新五合目に向かう道路に出た。道路も雪崩で埋まり除雪車が出ていた。

駐車場に辿り着いたら、駐車場も全面雪崩にやられて、我々の車2台も含めて20台くらいがグシャグシャにつぶされていた。

先に下山しているだろうと信じていた仲間の4名の姿はなかった。それでも、この場所で2時間ぐらい仲間を待っていたが姿を見ることはできなかった。

いずれにしてもパーティとして、関係先への一報と御殿場警察署へ事故状況報告に10時頃行く。

(つづく)

*写真は四合目付近での融雪時期の雪崩で、この時の写真ではありません。



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カサブランカさんへ、

素浪人kenさん

そのように認識されている方が多いですが、入山禁止は冬季または積雪期での一般登山者の入山禁止で、入山できるのは冬山の装備と経験者、またはそのような高度な経験と技術を持ったリーダがいることですが、実際はその資格があるかのチェック機能はなく、自己責任で届け出だけで行われています。
これは富士山だけでなく国内の日本アルプス全山、海外も高い山は殆ど同じです。

夏山でも険しい山は入山届が必要ですが、それ以外の山は規制や制限はありません。
その代り誰でも登れるように、一般登山道は整備されていて、安全がある程度確保されていて、休憩場所や山小屋も営業されているということで山開きをします。

自分が一般登山者か、冬山や高度な技術が要求されるレベルの登山者に値するかは、自ら責任を持って判断することです。

コメントありがとうございます。

2022/03/27 21:05:46

愚問ですが。。

カサブランカさん

冬の富士登山ってできるのですね。
あの美しい姿で狂暴ですね。
山開きがあるので冬は閉山と思っていました。

2022/03/27 16:26:22

喜美さんへ、

素浪人kenさん

山が好きで青春時代は登山に明け暮れて「山キチ」山キチガイと言われていました(笑)どちらかと言ったら、岩壁を登るロッククライマーでした。
結婚してしばらく危ないことはしませんでしたが、山岳会での後輩の面倒を見たり、尾根歩きを本格的にやりました。
6年ほど前から足を悪くして登山はできなくなりました。今はハイキング程度です。

2022/03/27 10:44:21

危ない

喜美さん

恐ろしい事です 素人は近付かない事ですね

2022/03/27 09:37:27

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