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敏洋’s 昭和の恋物語り
ボク、みつけたよ! (四十七)
2022年03月12日
テーマ:テーマ無し
翌日に、父にはないしょで母のもとにいきました。前夜しこたま叱られた兄が、もうおまえの相手はしてられんとばかりに、母親に投げたわけです。うち沈んだ表情をみせる母親にたいして「かあちゃん、ズルイぞ。じぶんだけたべて!」と、部屋にはいるなり、なじりました。甘いにおいが充満していたのです。なつかしいにおいでしたが、すぐにはそれが何なのかを思い出すことはできませんでした。きょろきょろと部屋をながめますが、わかりません。そのにおいをかもし出すお花があるわけでもありませんし、果物があるわけでもありません。
そこは殺風景な部屋で、真っしろなかべが印象的でした。ベッドの横にいすがひとつと、小さな正方形の台があるだけです。そしてその台の上にあるのは、水差しだけです。くすりを飲むおりにつかうのでしょうが、ひょっとしてその水がにおいの正体かと口にしてみました。ですがやはりただの水で、無味無臭そのものでした。「ぼくにもたべさせてよ、のませてよ」。せがんだ気がします。
そのときに看護婦さんがやってきて「お母さん、あした手術なの。こまらせないでね」と、わたしに言います。なんのことか分からぬわたしは「しゅじゅつってなあに?」と、ベッドに座っている母親に抱きつこうとしました。「だめ、だめ!」。看護婦さんに、強い口調でたしなめられました。「ボクちゃんは強い子、男の子でしょ」。母もまた、わたしを拒否したのです。その部屋にはなにものも寄せ付けない潔さがあって、そのくせせきりょう感もただよっていた気がします。
夏休みが明日には終わるというのに、母がもどりません。まだ病院かとおもい、行きたいと兄につげても首をたてにふりません。父には内緒のことですので、話すわけにもいきません。ひとりでと考えもしますが、どこをどう歩いたのか、わからないのです。兄に連れられて歩いたがために、あちこちとよそ見ばかりをしてしまい、道順がさっぱりです。なんどか右に左にと道を曲がったことは覚えているのですが、ひとりでは迷子になるのが関の山です。結局のところ、新学期がはじまって二日目にもどってきました。のちになってわかったのですが、家出をしていたのです。それからです、父のわたしに対する猫かわいがりがはじまったのは。そして母との思い出が、ぷっつりとなくなってしまったのは。
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