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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百九十) 

2022年01月27日 外部ブログ記事
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 昭和初期に、たび重なる飢饉におそわれた東北地方。このことにともない女衒を仲介とした身売りが横行した。この世相に憂えた青年将校たちによるクーデター未遂、昭和十一年に二・二六事件が起きた。その兵士たちの中には、東北出身の者が多々いた。
 五平の脳裏に苦い思い出がよみがえる。「借金さえ返し終えれば、戻ってこれるんだ。お前さん次第では、十年が八年にいや七年にもなるってもんだ」哀しい嘘だった。一度苦界に身を落とせば、中々に浮かび上がれない。自身の知らぬ内に増えていく借財がある。親元への送金を勝手にされてしまう娘も、まれにいた。酒に逃げ込む父親、娘にすがりついて離さぬ母親、両手を合わせる祖父母、そして訳もわからずに右往左往する幼子たち。そんな中「さあさ、愁嘆場もこれまでだ!」と、娘を連れ去る五平だった。
「お待たせしました、わたし助役でございます。村長はちと用があり、外出しておりますもので」と、助役がおっとり刀で出てきた。カウンターを挟んで、五平と助役が対峙する。身なりからして近辺の者ではないと判断しつつも、うかつな対応はできぬと傲然とした態度をみせた。少し前のこと、他町で詐欺事件がおきたと聞かされている。某企業の依頼で、新工場建設用地の選定をしているとの触れ込みだった。材木業を営んでいた店が、主が戦死したことにより廃業をしてしまった折りのことだった。焦った町の幹部たちが、その仲介人に対して多額の賄賂を提供して、なんとか誘致を勝ち取ろうとした。しかしその工場建設が虚偽のことでありることが分かり、町長、助役はもちろんのこと、課によっては係長に至るまで処分の対象となってしまった。
 しかし今回は、五平が助役の眼前にどんと札を積み上げた。「そ、その、そのお金は、どういうことで……」 思いも寄らぬ事態に、助役が目を剥き職員たちは声を失った。「寄付をさせていただきたい」と、声をおしころして五平が言った。「ど、どうぞ、こちらへ。ほら、ご案内して」 平身低頭しながら、助役が奥に取って返す。息を殺して成り行きを見守っていた村長に、ご注進に走った。
「村長、村長。寄付ですと、寄付」 興奮のあまり、顔を上気させて助役が小躍りせんばかりに存置用の下に駆け寄った。「いや、待て待て。このご時世じゃ。とんでもない難事を持ちかけられゃせんかの」 あくまで慎重に構える村長に対して、「とにかく話を聞きましょうぞ。留守だと言いましたが、わたしの知らぬうちにお帰りになっていたということにしましょうて」 とりあえず助役が聞き置くというのはどうか、とあくまで二の足を踏む村長に対して「選挙がありますで、ここで一発花火でも上げんことには」と、強く促した。

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