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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第二部〜 (百五十一) 

2021年10月21日 外部ブログ記事
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 次第に昨夜の記憶が甦ってきた。
宿舎に帰ったものの、襲いくる絶望感と寂しさに耐え兼ねて、ふらふらとこの橘屋まで来てしまった。
「酒!」
「承知いたしました。それじゃ、離れの方へどうぞ」
 ぶっきら棒な正三を初めて見る、女将。尋常ではない正三だと、仲居に告げた。
「いいこと、多少のご無理にも応えてちょうだい。万が一にも悶着にならないよう、気を付けてちょうだい」
「はい、心します。」
 ベテラン仲居に対応させるなど、最大級に気を使う女将だった。そして、源之助への報告をした。
「そうか…、相当に堪えたようだな」。
源之助の口調から「女性がらみね。正三坊ちゃんも、苦しまれるのね。相手の女性もさぞかし、のことでしょうに」と、感慨に耽る女将だ。

 源之助が官吏になりたての頃、この橘屋に足繁く通った。今の正三と同じように、源之助もまた将来を嘱望されていた。
「酒に強くなれ、女遊びもしろ!しかし飲まれてはならん、溺れてはならん。己の何たるかを、知ることだ」
 佐伯本家の、先代当主の言葉だ。源之助、二十四歳。青雲に燃える、青年だった。
「女将さん。今夜は一人ですが、宜しいですか?」
「あらまあ、お珍しい。どうぞ、どうぞ。大歓迎、ですわ」
 緊張の面持ちで部屋に入る、源之助。にこやかな表情の、女将。

「どうぞごゆるりと、お過ごしくださいませ」と、型どおりの挨拶を受けた。
終わると同時に座布団を外して、畳に頭をこすりつけた。腹の底から搾り出すような声で「実は、女将さん。大変に申し……」と、平身低頭した。
ただただ「申し訳ないことをしました」と、畳に頭をこすりつけた。 
 慌てて女将が、源之助の手を取り体を起こさせた。
「佐伯さま、みなまでおっしゃいますな。分かっております、承知しております。みねには、引導をわたしております」
 凛として、女将は源之助に告げた。
「えっ? ど、どうして、それを。まさか、父の方から、、、」
「おっしゃいますな。男と女のこと、出会いがあれば、別れもございます」と、源之助の言葉にかぶせた。

「みねさんにお会いして、直に謝りたいのですが」
「それは、お止めになった方が宜しいかと」
「しかしそれでは」
 暫く押し問答が続いたものの、結局は女将が頑として拒否した。
娘であるみねの誇りを保たせる為の、心配りだった。

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