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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (五十九) 

2021年01月14日 外部ブログ記事
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 小夜子主導で始まった交際は、周囲の目をまるで気にしない奔放なものだった。
男女七歳にして、同席せず! など、どこ吹く風とばかりに振舞った。
連れ立って歩く折には必ず腕を組み、時にはピッタリとしがみつく小夜子だった。
すれ違う大人たちが怪訝そうな面持ちを見せても、「こんにちわ!」と、明るく声をかける。
子供たちの囃す声に対しては、ニコニコと微笑み返す小夜子だ。
正三の友人と出会った折には、嫌がる正三を尻目に、これみよがしに見せ付けた。

「こそこそすること、ないでしょ!」
目線を伏せる正三に対し、強い口調で詰ることも間々あった。
「正三兄さん。少し控えた方が、宜しいんじゃない? 
噂になってます、町中で。わたし、恥ずかしいわ。
小夜子さんも、小夜子さんよ。
まるで下僕扱いだわ。あんなお方だとは思わなかった」
 憤慨する幸恵に対し、正三は「うん、まあなあ。でも、小夜子さんには小夜子さんの考え方が、、、」と、言葉を濁した。
初めの内こそ、気恥ずかしさと煩わしさを感じていたが、友人たちの言葉の裏に潜む羨望を見てからは、誇らしさを感じ始めていた。
異性との交わりが皆無だった正三は、その甘美さにどっぷりと浸り始めていた。

 そんな正三に業を煮やした作左衛門が、仏壇を拝みつつ正三に対して背を向けたまま言い放った。
「正三! どういうつもりだ、一体。
嫁に貰うつもりなのか。あんなチャラチャラした女は、我が家の家風には合わんぞ! 
お前は長男なのだからな。本家ならまだしも、分家じゃないか! 
しかもだ、いかがわしい物に手を出している茂作の娘だ。
許さんぞ、わしは。佐伯家は、由緒ある庄屋なんじゃからな。
大方、佐伯家の財産目当てに、茂作が娘を焚き付けてとるんじゃろうて」

「お父さん、それはあんまりです。
彼女は、そんな女性じゃありません! 純粋な女性です! 
確かに奔放な面はありますが、新時代の女性なんです。
良からぬ噂が立っていることは、知っています。
でも、天地神明に誓って、不純な行為はしていません。
まだ将来を約束した訳ではありませんが、妻に迎えても良いと思っています」

「な、何を言うか! 許さんぞ、そんなことは。
おまえは逓信省を辞した後にはわしの後を継がねばならん。
六代目作左衛門を名乗ることになるのだぞ」
 烈火の如く怒る作左衛門に対し、正三は毅然として反論した。
「許すも許さないも、これは僕の問題です」
「馬鹿者! 親の言うことを聞けんとは、どういうことじゃ!」
「お言葉ですが、お父さん。
今は、民主主義の時代です。戦前とは、違います。
僕の人生は、自分で決めます」

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