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敏洋’s 昭和の恋物語り

水たまりの中の青空 〜第一部〜 (五十七) 

2021年01月12日 外部ブログ記事
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 翌日、小夜子の回りは人だかりだった。
二日間だけの休みにも関わらす、長期間欠席したかの如き騒ぎだった。
「小夜子さま。入院されていたという噂で持ち切りなのですが、本当ですか? 」
「わたくしが、入院? どうしてそんなことになるのかしら? 」
「日曜日に、朝早くお出かけされましたよね」
「ええ、良くご存じね。正三さんが上京されるとお聞きしたので、お供させていただこうと。
でも、熱が出てしまって。正三さんには、ほんとご迷惑をおかけしましたわ。
正三さん、ご立派ね。官吏さまになられるのね」

 一斉に感嘆の声が上がった。臆することなく、さらりと正三の名を出した。
「正三さんと、お付き合い、されてらっしゃる、のですか?」
恐る恐る聞き返す後輩に、「ふふふ。良い方よね、正三さん」と、笑みを浮かべる小夜子だった。
「それで、もう、お体はよろしいのですか?」
「ありがとう、下がりました。知恵熱なんて、今頃、ねえ」
 小夜子の軽妙な受け答えに、一同からどっと笑いが起きた。

 そしてひと月ほど経った頃、学校内がまた小夜子の話で持ちきりとなった。
「ねえねえ、お母さんの話だとね、、、」
「知ってる知ってる。小夜子さまのことでしょう? すごいわよね。
知恵熱だなんて、冗談おっしゃってたけど」
「世界のモデルさんですってね? ご家族の契りを交わされたんですって」
「そのモデルさんって、世界中を旅してるんですってね。いいなあ、色んな国に行けるんですものね」

 教師間でも、喧々ガクガクの議論となり、退学処分にすべきという意見も出た。
「けしからんです、問題です。嘘を吐いていたわけですから」
「でもまあ、気持ちが分からないわけじゃありません。
アナスターシアと一緒できるなんて、一生に一度あるかない、、、」
 理解を示す女教師に対して、お局的存在の女教師が噛みついた。
「とんでもない! まだ学生ですよ、あの子は。校内態度も色々問題を抱えています」
「先生、それはちょっと。高慢な態度をとりますが、だからといって」
「それに今は、いい子ですよ。そのアナなんとかという女性が、いい刺激になったようですし」
 と、複数の教師から擁護の声が上がった。

「なによりですなあ、彼のこともありますしなあ。あちらでは、不問に付するということですし」
「ああ、佐伯正三くんですか」
「先生、名前は出さないように。どうでしょう、先生方。校長に一任するということで」と、教頭が話を引き取った。
結局校長一任となり、一ヶ月間の停学処分となった。
厳しすぎるという声が生徒の間から上がったが、当の本人は、のほほんとしたもので、
「丁度いいわよ。あたし、学校やめる」と、まるで意に介さない小夜子だった。

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