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私家版・日豪の比較文化人類学 〜群れから抜け出した羊が見たもの〜
年齢と時間の感覚
2011年06月26日
テーマ:テーマ無し
昨日(2011年6月25日)は67歳の誕生日でした。家族は世界のあちこちに散らばって生活しているので特別のお祝いなどありませんが、ニューヨークからは娘の一家がスカイプで「おめでとう!」と言ってきました。「ハッピー・バースデイ」を歌ってくれたのですが、一緒に歌ってくれた2歳の孫息子は自分の誕生日と勘違いして大喜びでした。
お昼は久しぶりに外食にして、山の上のマレニーのレストランでランチにしたのですが、オーダーの行き違いがあってパンプキン・スープとパン、飲み物は私がピルスナーのビール、ワイフがグラスでワインというだけの惨めなお祝いとなってしまいました。
一茶の感ずる「めでたさも中くらい」とは事情が違うでしょうが、私にとっては人生の残りが次第に減ってゆくという意味合いで、誕生日もあまり早くめぐって来ては都合が悪いのです。オーストラリアに移住してからもう6回目の誕生日を迎えたと思うと時の流れの速さに慄然とします。会社の先輩が「定年過ぎると1日過ぎるのがとても速いよ」と言っていたのが実感として分かります。恐らく、誰でもこれくらいの年になれば感ずることでしょう。
最近、不思議に思うことがあります。私はベッドに入って寝る前と目を覚ました時に、横になったまま両手を組んで力一杯胸の前で挟むように押したり、逆に引いたり、組んだ両手を頭上に持って行って左右に引っ張る運動をします。上半身の筋力を増強してゴルフの飛距離を維持するのが狙いで、その運動20秒を2セットするのに柱時計のチックタック音でカウントします。不思議なのは、その1秒の間隔がこんなにも短かったのかと思うことです。
力を振り絞って出すので1秒、1秒が長く感じられるはずだと思うのですがそうでもなく、20秒は時計が速く回っているのではないかと感ずるほどあっけなく終わってしまいます。子供の頃目を閉じて1分間たったと思ったら合図を出してその正確さを競うゲームがありましたが、その時頭の中で刻んだ1秒は、もっともっと長く、ゆっくりだったような気がします。実際に、子供と高齢者で同じ実験をすると高齢の人の方が早く1分経過したと判断する結果があるといいます。
私は合唱を楽しんだりフルートを吹いたりします。合唱は指揮者のテンポ、フルートはカラオケのテンポに合わせて演奏しますから曲のスピードは自分の好みにする訳にはいきません。しかし、確証はないのですが若い頃に比べて感覚的に曲のテンポ、スピードは若干速くなっているように思います。実際、学生の頃私が指揮をした合唱を聞いてみると、やや間延びした印象を受けます。それは加齢によって時間の感覚が速く流れる方に変化してくることの良い例ではないかと思うのです。
年齢と時間の感覚は様々な面からその原因や背景が語られているようです。例えば10歳の子供の1日はその子にとっては全人生の3650分の1ですが50歳の人の1日は1万8250分の1にしかならない訳で、それまで生きて来た人生の単位時間当たりの割合を比べてみると明らかに高齢者の方が小さい、すなわち短い・速いということになります。これは理屈ではよく分かりますが、「1日の24時間は赤ちゃんでもお年寄りでも平等なのに・・・」どうして? の疑問には答えてくれません。でも感じ方、感覚が問題なのであって、高齢者の方が経験豊富なだけ相対的に時間が早く流れることは確かでしょう。
東京工業大学の本川達雄教授によりますと、「エネルギー消費は体重が大きいほど少ない」ので体の小さな子どもは体重当たりのエネルギー消費が大きいといいます。同じ時間内に子供は大人より多くのことをするので、より長く感じるということになります。私など何もしないで家で無為に過ごしていても、退屈で1日が長いどころか、毎日が速く過ぎ去って行くのでこの説は体験的に正しい気がします。
とすると、残された人生が「あっ」という間に終わるのはゴメンですから、音楽やスポーツを楽しんだり、カメラを持って野山を徘徊したり、畑仕事に汗を流したり、家庭の雑用を引き受けたり、ブログを書いたり…と、やることはいっぱいあるので、こうしたことにエネルギーを消費してみようかなと思っています。人生残存期間が倍になれば(感じれば)嬉しいですね。
せいぜい、周りに嫌がられないように……。
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