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敏洋’s 昭和の恋物語り

[宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり!(二十八 了) 

2017年10月09日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



「いやしかし…佐々木小次郎を倒せば良いのではなかったのか。
ならば、どうすれば。
まともに闘って勝てる相手でもなし」

 絞り出すような小声のムサシに、番頭は頭を下げるだけだった。

「あの浜に戻れというのか! 
ごんすけに戻れと言うのか。
またしても『南蛮人! 南蛮人!』と後ろ指を差されねばならぬのか…。
それとも長崎とかいう港にて、言葉も分からぬ南蛮人を頼れとでも言うのか…」

 呆然と立ち尽くすムサシに対して憐憫の表情を見せつつも、ムサシがガックリと肩を落とし首をうなだれた時には、フンと鼻を鳴らす番頭だった。

「それでは、」と体を曲げて木戸内に入る番頭に対し、恨み辛みをどれ程並べようとも致し方なきことと、諦めざるを得ないムサシだった。
しかし木戸口が閉じられてもすぐには立ち去る気力が湧かず、暫くの間立ちすくんでいた。
と、信じられぬ会話が聞こえた。

「旦那さま、終わりましてございます。
それにしても、哀れな男でございますな。
当初から士官の道など有りませぬのに。
ただただ小次郎さまを…。
怪我でもさせられればいうことが、まさかのことに」
「これこれ、番頭さん。滅多なことは口にせぬように」

 わなわなと拳が震え怒り心頭に走るムサシだったが、袖に入れられた小判の重みがムサシの心を重くした。        

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