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北軽井沢 虹の街 爽やかな風
小説「ルオムの森」―4
2017年08月22日
テーマ:テーマ無し
人生は物語、しかもそれは人の数ほどあり、一つとして同じ物語はない。物語は常に出会いから始まるものだ。私はこの地に移住してきて間もなく一組の若いカップルと出会った。ブログを書き始めてほどなくコメントしてきた女性がいた。彼女もブログを書いていて、どうやら近くに住んでいることがわかったが、会う機会はなかった。私がアルバイトで野菜売りをしていた時、ある日二人で突然私の前に現れたのだった。以来現在まで交際は続いているが、男性の名前は福田正利で私と同じ干支で一まわり若い。ブログで知り合った女性の方は福田美代子という。年齢は旦那よりも2〜3歳若いのではないかと思われる。通称男性の方はモリリン、女性は何故か森子と呼ばれているが、いつの間にか森子は私の嬬恋の妹となった。本人は娘を希望したが年齢に無理があるということでそれは認められなかったというエピソードもある。それほどに仲良く交際しているということだが、そんなに頻繁にあっているということではなく、何かあるとすぐに連絡しあって会えるという仲だ。
この二人は、確か私よりも10年も前に移住してきている。この地では先輩格であった。
モリリンは手作りでナイフを作る職人で、「ナイフ工房ベアトープ」の名で住まいのそばに工房をもっている。後に私もナイフと家庭料理用包丁を作ってもらい、現在も使っている。彼は、浅間高原の大自然に魅せられて、ここで物作りを目指す人たちが多くいる中の一人だ。妻の森子は、エプロンを自作していてオリジナルのエプロンを提供している。
子どものいない二人は3匹の犬と生活していて、犬つながりの仲間が大勢いる。この地に移住してくるという人たちは、私に言わせればずいぶんと変わり者なのだが、妻の希望でただついてきた私は変わり者ではないと考えている。しかし、この二人は冬には何もできないほど寒いこの地に40代のはじめに移住してきたというまったくの変わり者である。
ある日モリリンがメールを送ってきた。それには、オカリナ奏者のホンヤミカコがこの地に移住してきて音楽活動を開始したとあり、ヨガの指導者でもある彼女がルオムで活動を開始するので私に紹介しておきたいという内容だった。北海道育ちのホンヤミカコは、四国で活動していて、縁あって同じ四国から移住してきて「つくつく村」を開設した人物のセレモニーに出演した縁で嬬恋村を訪れ、この浅間高原の大自然に魅せられてこの地に移住を決めたという。暑い四国から北海道に帰るつもりだった彼女を浅間高原の自然が捕まえたというわけだ。この地にほれ込んでいる私としては、それ見ろ、と言いたいが、この浅間高原の魅力はそれほどに偉大なのだ。冬は寒いといっても、その寒さに耐えるだけの価値がある。いや、その寒さがあるからこその魅力は何ものにも代えがたいのである。
ホンヤミカコは、この地に北海道を見たに違いない。日本のほとんど真ん中に位置する浅間高原で暮らし、ここを拠点に活動できれば、北海道よりも地の利があるのは当然であった。ところがプロフィールを見るとこれがたいそうな経歴の持ち主で、1994年東芝EMIよりCD「Ocarina」でメジャーデビューして以来、自作の曲を中心とするCDを14枚、楽譜集を5冊出版している。代表曲はNHK「みんなのうた」で放送の「ななかまどの秋」、サントリー「続・のほほん茶」テレビCM「たんぽぽぽ」などがある。
また、2007年イタリア公演の際、「伝統的音楽文化向上への貢献」により「ロンバルディア州知事金メダル」受賞。外務省の招聘により、2006年韓国、2008年エクアドル、2015年中米ニカラグア、パナマ、ドミニカ共和国で公演を行い、各国でスタンディングオベーションが起こる成功をおさめている。そしてまたNHK教育テレビ「トゥトゥアンサンブル」に2年間レギュラー出演。西日本放送テレビ「風に抱かれて〜本谷美加子の四国巡礼」に1年9か月レギュラー出演。番組中、四国八十八か所歩き遍路を行い結願する。著書には「風に招かれて〜本谷美加子の四国巡礼」高知新聞社刊があり、高知県観光特使、高松市観光大使、鳥取市観光大使、四万十市観光大使を務めている。
私はプレゼントされた一枚のCDを聞き、オカリナの魅力に感心し、こともあろうにオカリナを習うというはめになった。その後ルオムの森で初めての指導を受け、オカリナ演奏の第一歩を踏み入れたのだった。ルオムの森という独特の雰囲気の中で流れるオカリナの音は、かつて宗次郎のオカリナを聞いたあのウインターフェスティバルの夜を思い出させた。まるで寒い星空をひょうひょうと飛ぶ鳥のような気持ちになった宗次郎のあのオカリナを自分が吹くことになるとは、思ってもいなかった出来事だ。人生は物語。オカリナと出会った私はその後、ルオムに行くことが増えていった。
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