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北軽井沢 虹の街 爽やかな風

小説その32 

2016年07月23日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し


野菜直売店は草津にある。草津温泉は全国でも3つの指に入る名湯だが、冬にはスキー場も賑わっている。冬のスキーレンタルショップ店が夏には野菜直売店として活躍するという、なかなか効率のいい経営だ。7月18日の日曜日を店のオープンと決めた社長は、チラシを作り近くの旅館やユースホステルなどに配るという。爽太は社長とチラシ配りに出かけ、草津の地理を把握する。店には手製の看板を作り18日オープンを知らせる。野菜を陳列する棚を出してペンキ塗りをする。その合間に、爽太は社長からさまざまな情報を得る。店に来る客は、地元に住み生活している人、近くの旅館やホテルに宿泊している人、車で通りかかる旅人などであるが、それぞれに対する対応は違う。
また、販売する野菜はキャベツ、レタス、トウモロコシ、キュウリ、モロッコいんげん、大根、カボチャは、自分たちが畑で作るが、そのほかのトマトやナス、ブルーベリー、枝豆などは社長が沼田まで仕入れに出かけるという。
野菜の販売方法にも注意事項がある。特にレタスは葉が崩れやすく、選ぶために客が触りまわすと傷んでしまうので、触らせないように注意しろという。爽太はうなずきながら、実際にその場になってみないとわからないことを細かく言う社長に感心したり、疑問に思ったりしながら持参した小さなノートにメモをとる。
 
野菜を積み込む嬬恋村の基地は、爽太が勤務したスキーレンタルの店だった。そこに収穫された野菜や仕入れてきた野菜が集められ、コンテと呼ばれる箱に詰められる。幌のかかった軽トラックにそのコンテを積み込むが、コンテとコンテはきっちりと重ねればはまり込んで動かないようになっている。そのコンテを4段づつ重ねて野菜を積み込んでいく。
野菜の価格は、キャベツ、レタス、トウモロコシ、大根はすべて100円。これはとても簡単だが、仕入れたトマトは一袋350円、枝豆は280円、ブルーベリーは430円などと暗算で計算するには間違いやすい。小さな電卓と釣銭を持って出かけることになる。
その基地から草津へ行くには近道があるという。爽太は、軽トラックに乗ってその近道を通り、草津までの時間を実習した。近道は、離合できないような狭い場所もあるが、交通量が少なく時間は計算できる。嬬恋村の基地から草津まではほとんど登り道で、野菜を満載した軽トラックを運転するには急こう配の場所もあり、注意がいる。小さな川に沿って登りながらうっそうと茂る森の中はひんやりと涼しい。辺りをうかがいながらゆっくりと進んでいくと、一匹の鹿が道路から近いところにいてこちらを見ている。爽太は車を止め外に出て携帯電話のカメラをかまえた。鹿は逃げることもなくこちらを見て悠然としていた。初めてみる鹿に爽太は興奮を覚えた。
今まで過去にこの仕事をした人をまるで知っているようなそぶりの鹿は、今年はお前さんがやるの?とでも言いたそうな顔に見え、爽太は思わず心がゆるんだ。その先の急傾斜を登り切り、右に大きく曲がると森の外に出た。そして辺り一面壮大なキャベツ畑が開けている。しばらく進んで車を止め振り返ると雄大な浅間山が見える。爽太は嬉しくなった。
これから毎日この道を通うことになるが、道中もわくわくするようなコースだ。その日は空車で走ったが、野菜満載の軽トラックは、きっと毎日うなりながら走るだろう。
野菜直売店オープンの日は刻々と近づいている。
 
 
 

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