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敏洋’s 昭和の恋物語り

[舟のない港](二十) 

2016年03月24日 外部ブログ記事
テーマ:テーマ無し



 時計が十一時を告げると、男は麗子と共に明るい外に出た。
昨日の雨がまるで嘘のようにカラリと晴れ渡っていた。
道路の所々にある水たまりが、かろうじて昨日の激しい雨のことを思い出させる。
麗子は男の腕に自分の腕をからませて、もう離さないとでも言いたげだった。
一線を越えることに対してあれ程に躊躇していた麗子の豹変ぶりが、男には理解できなかった。
プライドの高さは、M造船の重役の父親譲りだと言われていた。
そしてそのことを麗子も隠そうともせず「一流のビジネスマンと結婚するわ」と、常に公言していた。

 先日のことだ。
人事課所属である景子からの情報で、男の評価が高く近い内に重要な仕事を与えられ昇進間近だと聞かされた。
そして、そのことで社内の女性社員の間で花丸がついたとも聞かされた。
「気をつけなさいよ、みんな狙っているわよ」とも、耳打ちされた。
景子とは同期入社で、食堂で席を同じにした折りに知り合った。
学部違いではあったが同じ大学を卒業していたことから、互いのプライベートを話す仲になった。
そして景子だけには男との交際の事実を告げていたのである。

 しかし、今朝の麗子にはどうでもいいことのように感じられていた。
これほどに男が愛おしく思えることが、不思議でならない。
 昨日までと同じ町並みなのに、今の麗子には全てが新しく感じられる。
はるか彼方の山々の緑が、更に緑々しく映り、家並みが整然と感じられた。
冷たくそそり立つビル群でさえ、活き々々と感じられる。
繁雑な人通りも、さ程に苦にならない。

 いつもならソクサクと通り過ぎる商店街のウィンドウを、一軒ずつ足を止めては覗き込む。
そしてあれやこれやと、男に話しかける。
始めの内こそ男もキチンと受け答えしていたが、暫くすると「うん、うん」と生返事を返した。

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