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敏洋’s 昭和の恋物語り

にあんちゃん 〜介護施設で働き出した〜 (二十四) 

2016年02月20日 外部ブログ記事
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「お上手ですね、坂本さん」
 飛びっきりの笑顔でもって褒めた。
「なによ、あんた! 盗み聞きかい。いやらしいわね」

 二人だけの時間を壊された田上が、鬼のような形相で怒鳴りつけた。
満面に笑みを湛えてうなづく坂本とは対照的に、口紅の毒々しい赤が薄暗い部屋で禍々しさを漂わせていた。
 そしてこの翌日から坂本のセクハラまがいの行為が始まり、田上の敵視する態度が見られるようになったことを思い出した。

 年老いた坂本が家族から見放されて一人淋しい生活を余儀なくされたことを知り、ほのかの心の中に憐憫の情が芽生え始めた。
恐怖のどん底に落とされたというのに、じわじわと胸に広がるこの感情を、どう処していいのか。
頬を伝う一筋二筋と流れる涙をどう抑えればいいのか…。

 年老いた者にとって家族の存在がどれ程に大きいものか、道子に看病をされている孝道を見てほのかの心の中に深く刻み込まれていた。
 孝道が病で床に就いた折りの、道子の看病姿が思い出された。
「道子さんに迷惑はかけられん。その時が来たら、老人ホームにでも入るから」 
 それが、孝道の口癖だった。

しかし突然に床に伏せってしまった。
軽い風邪だからと高をくくり、病院に行くことを億劫がったがために肺炎を患ってしまった。

 入院当初は、道子が泊まり込みで世話をした。
やせ細った手で道子の手をしっかりと握り、何度もありがとうの言葉を発する孝道を見るにつけ、ほのかは己が責められているようで辛かった。

 孝道を見舞った夜には、必ずシゲ子の夢を見た。
ひと言も発することなくじっとほのかを見つめるシゲ子で、枕元に座り悲しげな目を見せるだけだった。
ごめんなさいと謝ろうとするほのかだが、声を絞り出そうとするほのかだが、閉じた口が開けなかった。

 孝男に話しても笑い飛ばすだけで、看病疲れの道子には話すことができなった。
長男は受験を控えピリピリしている。

「婆ちゃんは、ほのかを心配しているんだよ。だから悲しげな顔をしているんだよ」
 次男だけがほのかを慰めるが、ほのかの胸には届かなかった。
どころか、シゲ子の顔が恨めしげな表情をしていたように思えてきてしまった。

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