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バイリンガルの国 

2015年11月25日 ナビトモブログ記事
テーマ:思い出すままに

「先生は、カナダに住んでいらしたことが、おありですか・・?」

先日のコンクール審査の休憩時に、初めてお会いした先生から、声を掛けられた。


「カナダからいらしたセヴィーヤ先生から、よくお話しを伺っていました。セヴィーヤ先生の事を、音楽雑誌に書いていらした記事も、読みました・・」

世間は狭いというけれど、音楽の世界の狭さは際立っている。


お蔭で私は、懐かしいセヴィーラ教授の名前を久しぶりに耳にして、25年ぶりに楽しかったオタワの一年を思い出したのだった。


主人の関係で一年間移り住んだオタワでは、教授が唯一の音楽関係者の知人だったから、毎週彼の教えるオタワ大学へ遊びに行っていたのだ。

二、三人の学生のレッスンを毎週聞かせて戴いたり、「良かったら音楽史の講座も聞かないかい」と誘われて、クラス授業にも参加した。

講座で扱っている内容は西洋音楽史なので、大体知っている事だから、きっと楽しいだろうなと思ったのだが、これは別の意味でも貴重な経験であった。


世間知らずの私は、カナダの公用語が英仏二か国語だということを、住むまで全く知らなかったのだ。

アメリカで見慣れた、スーパー名や商品を見ながら、只単純にお隣の国、と捉えていただけだった。


まあ、25年前のことだけれど。


私たちが住んでいたオタワ市は、ケベック州という、唯一のフランス語圏に隣接した、オンタリオ州に造られた首都である。

川を一つ隔てたケベック州に行くと、街並みはヨーロッパの田舎町のようにのんびりした雰囲気に変わる。

オタワでは、アルコールは専門店でしか購入できなかったが、ケベックのお店ではワインのボトルが並んでいて、同じお金が使えるのも不思議に思える程だった。

余り人気のない英語圏のレストランに比べて、ケベック州のレストランは美味しいお店が多かった。


その頃は、お互いに犬猿の仲だったそうで、ケベックでは「Go Home Anglophone(出ていけ英語野郎)」という落書きなども見かけたりした。

何も知らない我が家の子供たちは、小学校で「あの子はフレンチだから」というと、それは悪口の表現なのだ、と思っっていたらしい。

語学のもつ独自性は、民族の歴史にもかかわってくるので、協調するのには困難がともなうのだろう。

フランス語圏出身のトルドーが首相になった頃から、バイリンガル教育に力を入れ始めた,という話をきいた。

私たちが住んでいた頃はもうすでに、若い人や、サービス業についている人達は、自在に両国語を操っていて感心したけれど。


オタワ大学は、世界最大のバイリンガル大学だそうで、何の認識もせずに訪れた私にとって、そのことを身を以て経験できたのは、セヴィーラ教授の講座にお邪魔したお蔭である。


オタワでは、セヴィーラという発音で呼ばれていた教授は、元来フランス人なのだが、流暢な英語で授業を進めている。

ところが、次の週になると、授業の言語がフランス語に交換するのだった。

そして、その翌週は、また英語に交換される。

バイリンガルの国だから、どうやら学生たちにとって、別に不都合はないらしい。


それでも、質問するときには各々の母国語を使うので、自然に教授もその言語に合わせて質問に答えている。

そのうち、思い出したように、またその日の言語にもどる、という仕組みであった。


もともとは、それぞれの言語で、独立したクラスが組まれていたそうだが、その年は学生数が少なかったために、一つにまとめたのだという。

フランス語の全く分からない私には、聞き覚えのある作曲者や作品の名前から、講義の内容を想像するという、ちょっとクイズの様な面白さがあった。

最近の新聞記事では、トルドー首相の二世が現在の首相に当選したらしい。

バイリンガル政策も、また変わってくるのだろうか・・。



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暗譜

シシーマニアさん

吾喰楽さん、コメントありがとうございます。

バイリンガルの人の頭の中は、私も想像がつきません。
特に、一瞬にして変換できる人はすごいですよね。

暗譜はちょっと違って、天才はともかく凡人にとっては、慣れと努力です。
でも最近、シニアたちの中には、楽譜を見て演奏する人も増えてきています。

2015/11/26 22:52:36

演奏

吾喰楽さん

以前、何処かで書きましたが、私は、バイリンガルの方を尊敬しています。
その方の頭の中を、覗きたい思いです。

そして、演奏家の方もです。
どうして、あれだけ長い楽譜を覚えられるのか。
勿論、努力な賜物なのでしょうが、私には到底、無理です。

2015/11/26 12:47:50

社会性

シシーマニアさん

師匠、コメントありがとうございました。

師匠は社会性がおありなのですね。

他国の事情は、中々理解しきれませんし、人種問題もさることながら、ユダヤ人の問題等、とても窺いしれない世界だと、私は最初から放棄しているところがあります。
日本の中でも、地方色が大きくある位だから、と思ったりして・・。

当地に転居する前には、色々な人に、たくさんアドバイスされました。
「閉鎖的」は、未知の地方に関してよく使われる言葉ですね。
一方、こちらでは東京人が使う「地方」という言葉が微妙に響くし、敏感になります。


音楽の世界では、知名度を上げるというのも仕事の一つなので、個人情報は流したがる傾向にあるのです。

2015/11/26 11:45:53

バイリンガルもまたよし

パトラッシュさん

私がかつて加わっていた世界、
金物業界:狭いも狭い、駆け抜けるに造作ない、小島のようなもの
短歌の世界:やはり島。主だった住人の、名前くらい大体知れている。
囲碁の世界:少し広いがやはり島。話をすると、すぐ共通の知人に辿り着く。

そこへ行くと、音楽の世界は、ジャンルが分かれていることもあり、もっと、ずっと広いと思っていました。

ケベックの独立は、時間の問題と見られていた時期もありました。
(独立運動の勢いというのは、往々にして、
実態より過大に見えることもあり)
住民投票の結果は、だから表層しか見ていなかった、
私のような他国民には意外なものでした。

歴史に「もし」は禁物ながら、
ケベックがもし独立していたら、大英帝国からのスコットランドの分離独立にも、
少なからぬ影響を及ぼしたかもしれません。
野次馬としては、歴史の壮大な実験を、見てみたい気が、
しないでもなかったですが、これで良いのでしょう。
人種や文化の違いを内包しつつも、国家としての規模の大きさを選ぶ。
そこにはやはり優位性があるのですから。

2015/11/26 08:40:33

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