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独りディナー
CDの贈り物
2015年11月17日
テーマ:シニアライフ
先日あるパーティで、長くウィーンに住んでいたという、声楽家にお会いした。
知人らしき人に、「これはウィーンの民族衣装で、本当はこの上にエプロンをかけるの」とロビーで話しているのを小耳に挟んだ私が、「まあ、ディアンドルですね!」と思わず声をかけたのだった。
ディアンドルというのはバイエルンからオーストリアにかけて見られる民族衣装で、主に若い女性たちが着る、白のブラウスにギャザーの広がったジャンパースカートをはいて、その上にエプロンを掛けるという、独特の服装である。
もともとは作業着だったのが、今では民族衣装として、パーティなどでも着用される。
その人は上着もさりげなくチロル地方特有の、ダークグリーンのフェルトで出来たジャケットを着てらしたのだ。
私は、ウィーンと聞くと、思わず冷静を失うところがあって、「ウィーンに住んでいらしたのですか?」と、続けて訊くと、横にいらした方が、
「こちらは、オペレッタ歌手の方なのです」と紹介してくれた。
「マイナーな歌手です」と、その人は笑いながら言う。
「マイナーなピアニストです」と言う、いつものお株を取られてしまった私は、虚をつかれたように突然思いついて、
「シューマンの、『女の愛と生涯』等も、うたわれますか」と訊いたのだった。
「でも、あの曲は、ちょっと低めの声向きの曲ですよね。私はソプラノなので・・」とその人は答えたのだが、なおもしつこく
「でも、歌曲だから、高い声の人も歌いますよね」と食い下がる。
「ちょっと、あの曲を歌う方を探していたのです・・」と図々しく言いながら、その場は別れたのだった。
ところがその人は、テーブルについていた私の席にやってきて、「一応、あの曲は勉強はしたことがありますので・・」と言って名刺を渡してくれたのだ。
ウィーンに留学していた年代を照らし合わせると、私より若干若そうな様子だった。
私は、当地に転居して以来、一緒に音楽を楽しむお仲間に中々出会えなくて、何となくアンテナを張っているのだ。
ちょっと雑なアンテナだけど・・。
しかし、アンテナは張ってみるものである。
帰りがけにその人は、私のところに寄ってきて下さって、「もしよかったら、私のCDのコピー版があるので、差し上げます」と、プレゼントしてくれたのだ。
帰宅して聴いたその演奏は、落ち着いたやわらかい歌唱力で、さっそくメールを送ってお礼の気持ちを伝えた。
実際に、一緒に演奏するまでには時間が必要だろうけれど、一度は弾いてみたいと思っていた歌曲集「女の愛と生涯」に、一歩近づいた思いである。
それにしても、CDも、名刺も、持っていない私は、何だか考えさせられてしまった。
CDを下さるとは、なんという、素敵なプレゼントだろう。
これ以上の自己紹介はないし・・。
私は、演奏会をよく開いていた頃には、チラシを名刺代わりに差し上げるのが常だった。
運が良ければ、演奏会に足を運んでくれる場合もあるし・・。
50代の頃だったか、周りの友人たちの間でも、CD制作の話は飛び交っていた。
かつての、演奏会での録音を、聴きやすい様にCD化している人もいた。
でも、私は当地に転居してきたことで、気分的には老後に突入していた事もあって、それよりは演奏会にこだわっていた。
そもそもクラシックの世界は、何をするにも経済力を要するのだ。
CD制作は、大体リサイタルをするのと同じくらいの費用だと友人は言っていた。
シニアライフには、ライブ演奏の方が刺激的な気もした。
先日、娘の結婚披露宴で、息子が映像を作ってプレゼントした。
ピアノ伴奏で私も参加したのだけれど、その際、今の録音技術の簡便さには、本当に驚いてしまった。
スタジオがなくとも、我が家のピアノの部屋は、狭いながら防音設備を整えているので、まず雑音は入らない。
そして、息子が持参したパソコンで、録音は完了した。
まず、全曲を通して、何回か録音する。
細かいミス等は、気にせずに、何度か録音したものの中から、気に入ったテイクを決める。
そのあとは、ミスした部分を、録音しなおすのだが、その接続の素早く見事なこと。
これは、特別な技術を持ったプロでなくてはできないことだと、思い込んでいた私は、目の前で次々と繋げていくパソコンの底力には、心底たまげてしまったのだ。
それとももしかして、これは息子特有の、得意技なのか・・?
いや、そうではないだろう。まあ、私には無理そうだけれど・・。
時間がなかったので、技術的な説明はしてもらわなかったけれど、その日はピアノ録音だけ終えて、息子は自宅に戻ってから、ピアノに合わせて、自分のギターを重ね、歌を重ねて、という風に録音を完成させいったらしい。
まあ、今回はさらに、出来上がった音源に合わせて、映像も重ねたので、簡単ではなかったらしいけれど。
もしこのような技術に10年前の自分が遭遇していたら、私もCDを作ってみようと考えたかもしれない。
自分のCD,自分の著作、自分の絵画、自分の楽曲など等、全般的に言えることだけれど。
こんなに、粋で気の利いた贈り物は、ちょっと見当たらない。
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ありがとうございます。
彩さん、今も息子の映像を見てくださってるのですか・・?
ナビ友というよりも、気持ちはもう親友ですね(単なる親ばかです)
昨日は、友人の別荘に泊まり込んで、又々女子会をしてきました。
しゃべり倒して、今は心地よい疲労感です。
2015/11/19 19:36:23
【夕焼けオルゴール】
こんにちは。
皆さんの応援コメントも読ませていただき、
ココにはステキなファンがいらして、嬉しいですね。
私も、もちろんCD化に賛成!
迷う事はありません。
以前、お嬢様の結婚披露宴用にと、ご子息が
作られた(シシーさんの演奏も入ってましたよね)
「オンガ」音画、お気に入りに入れて、今も拝見、拝聴
しています。
観るたびに、胸に熱いものが込み上げます。
CD化のついでと言ってはなんですが…
クラシックを演奏されるシシーさんの姿を息子さんに
描いてもらって、You Tube版も創って下さい。
2015/11/19 11:02:13
励まして戴いて、ありがとうございます。
喜美さん、嬉しいコメントありがとうございます。
お蔭さまで、ちょっと、前向きな気分でいます。
まあ、実現までには、どのくらいかかりますか・・。
2015/11/18 08:14:26
創作
Reiさんこそ、素晴らしいプレゼントを、周りに分け与えていらっしゃるのでしょうね。
創作とは、世界に二つとない存在ですものね。
池袋の芸術劇場はよく行きました。懐かしい場所です。東京は遠くになりにけり、と事あるごとに思います。
ご盛会をお祈りしています。
又、ナビ友さんたちが集まるのでしょうね・・。
2015/11/17 21:30:18
ありがとうございました。
師匠、たびたびのコメント、ありがとうございます。
老後の目標ができた思いです。
録音となれば,半端な練習では追いつかないので、その気になって、臨もうかと思います。
まあ、CDは芸術家の専売特許、と思っていたのは遠い過去の話であることは、息子のパソコンで思い知りました。
気楽に、準備したいと思います。
2015/11/17 21:22:45
ぜひとも
私もシシーさんの演奏を聴きたいと思っている一人です。そんな機会を首を長くしてお待ちしています。
ライブでもCDでもどちらでも・・・。
私も恥ずかしながら、自分の作品の出ている展示会には来てくださいね、とみなさんに声をかけています。
出来栄えには満足していませんが、今の作品は今の自分そのものですから、それを見ていただけたらいいと思っています。
そして、いつかは作品集を作りたいと思っています。
2015/11/17 19:12:03
柔軟に・・・
CD如きものに囚われず、ライブ演奏をこそ、至上とする。
そこにシシーマニアさんの、音楽家としての矜持を、
垣間見た気がしないでもありません。
世俗に媚びず、自己顕示に陥らない。
そこにシシーマニアさんの、孤高の信念を感じないでもありません。
しかしながら、シシーマニアさんの演奏を、聞いてみたい人々も居ます。
私もその一人。
ご上京の折にでも・・・
とそれを待望しているのですが、未だ機会に恵まれず。
せめて、CDででも聞けたら、この飢えを癒す、一助になるでしょう。
そのディアンデル嬢と同じように、軽く考えられたら、いかがでしょう。
初対面の「これはと思う」人に限り、名刺代わりにお渡しする。
それを誰もが、感謝こそすれ、自己顕示とは、受け止めますまい。
2015/11/17 17:58:27
心境の変化
師匠。
今日のブログは、師匠のご本を読み終えた感想、でもありました。
「自作品」をプレゼントする素晴らしさ。
クラシックの演奏会は、ライブの臨場感に助けられて成立するところがあります。だからこそ、私の様な「マイナーなピアニスト」の演奏会にも足を運んで下さる人もいます。
でも、ひとたび録音して、ディスクという形にすると、「不世出のピアニスト」と言われたりする人と同じ土俵に立つことになります。
勿論文章の世界にも、同様なシビアさはあるとは思いますが、文章の様には日常化していないクラシック音楽では、聴く方の耳が本能的にランク付けしたり批評したり・・。
でも今、師匠のコメントを読みながら、プレゼント用にCD作りをするのもいいかなあ、とちらっと思いました。
むしろ、CD作りに及び腰だった自分が、おこがましいとさえ思えてきました。
今日、ブログを書いた時点では思いも寄らなかった心境の変化です。
2015/11/17 15:17:12
是非とも
私は、遍路旅に出た当初、リュックに著書(閑居堂の方)を5冊ほど詰めて行きました。
旅先で出会った、「これはと思う」人に、名刺代わりに差し上げるためです。
旅人であったり、宿の主であったりしました。
それが縁で、今も付き合いのある人がいます。
但し、本は重い。
見かけ以上に重荷になります。
それで次からは、見本一冊だけを持つことにしました。
これはと言う人に出会うと、後日送るからと、住所氏名をお聞きしました。
これは名案でした。
旅人は、誰だって、荷物を増やしたくはないですから。
シシーマニアさん、取り残されてはおりません。
単に、時代が進む速さへの、戸惑いがあるだけです。
まだまだ順応可能です。
幸いにも、良き技術者が、身近におられるではないですか。
CD、是非お出しになって下さい。
本に比べたら、携行するにも、造作ないことですし・・・
2015/11/17 13:48:09